和田小六

和田 小六（わだ ころく）の生涯と業績

和田小六（1890年8月5日 - 1952年6月11日）は、日本の航空工学の先駆者であり、著名な工学者です。彼は、東京帝国大学の航空研究所長として、長距離飛行の世界記録を打ち立てる航研機の開発に寄与したことでも知られています。さらに彼は、東京工業大学の学長や東京帝国大学の教授など、数々の重要な役職を歴任し、日本の航空工学の発展に大きな影響を与えました。

幼少期と教育背景

和田小六は、東京府において、政治家の木戸孝正と壽栄子の次男として生を受けました。彼の兄は政治家の木戸幸一であり、家族のバックグラウンドは彼の学問的なキャリアに影響を与えたと考えられています。学習院中等科を卒業した後、旧制第一高等学校を経て東京帝国大学工科大学（現在の東京大学工学部）の造船学科に進学し、1915年に卒業しました。

大学卒業後は、同大学院に進み、航空工学を専攻することとなります。1919年、祖父である木戸孝允の家業を継ぐために和田小六と改名し、和田家を継承しました。その後、1920年からは文部省留学生としてイギリス、アメリカ、ドイツ、フランスに留学し、ここでルートヴィヒ・プラントルやセオドア・フォン・カルマンから航空技術に関する教育を受けました。

航空研究所での活動

1921年に東京帝国大学航空研究所の所員となり、翌年帰国した和田は、文部省の航空用語調査委員などとしての活動を行う一方、1923年には東京帝国大学工学部の教授に就任しました。その後、1927年には『不等空気速度の測定について』という論文で博士号を取得し、風洞研究を通じて田中舘愛橘らと交流を深めました。

航研機の開発と世界記録

1932年、和田は航空研究所の所長に選出されて以来、東京瓦斯電気工業（現在のいすゞ自動車や日野自動車）に機体開発を依頼し、エンジンにはBMWの中古ガソリンエンジンを使用するなど、創造的なアプローチを模索しました。この取り組みにより、和田は航研機の開発を指導しました。そして、1938年5月13日、航研機は長距離飛行の世界記録を樹立しました。このフライトは、木更津の海軍飛行場から出発し、銚子を経由して群馬県太田の中島飛行機株式会社の本館上空を通り、神奈川県平塚海岸の航空灯台を回って元の地点に戻るという、約401.759 kmのコースで行われました。総距離は11,651 kmに及びました。

戦後の大学改革と晩年

1942年に設立された内閣技術院では、和田が次長に就任しましたが、航空研究所を技術院に移管する企画を拒否しました。1944年には東京工業大学の学長として新たな挑戦に臨み、社会における研究活動についての考察を行いながら大学の改革提案を行いました。この提案はGHQによって評価され、翌年には「大学設立基準設定に関する協議会」の委員長に任命されました。

1952年、和田は胃癌により62歳でこの世を去りました。彼の業績と影響は今なお評価され続けており、勲一等瑞宝章が追贈されました。彼の墓所は多磨霊園にあります。和田小六の生涯は、日本の航空工学の発展に多大な貢献をした一人の学者として、多くの人々の記憶に刻まれています。

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