和邇駅 (江若鉄道)

和邇駅：琵琶湖畔に消えた江若鉄道の駅

はじめに

滋賀県大津市にあった和邇駅は、かつて江若鉄道が運行していた駅です。1969年の江若鉄道の廃線に伴い、廃止されました。本記事では、和邇駅の開業から廃止までの歴史、駅舎の構造、周辺環境、そして実現しなかった壮大な路線計画について詳細に解説します。

開業から廃止まで

和邇駅が開業したのは1924年4月1日、江若鉄道の堅田駅から延伸開通した際に開業しました。その後、1926年には和邇駅から近江木戸駅までの区間が開通しました。

しかし、江若鉄道には当初、浜大津から福井県三宅に至る本線に加え、和邇駅から分岐して京都府の二条駅に至る支線の建設計画がありました。この計画は、鉄道敷設免許申請の対象にもなりましたが、資金や技術的な問題から却下され、実現しませんでした。

江若鉄道は1969年10月31日に営業を終了し、和邇駅も翌11月1日に廃止されました。

駅舎と周辺環境

和邇駅は列車の交換が可能な交換駅で、島式ホーム1面2線を有していました。旅客と貨物の取扱いができ、側線も備えていました。駅名標には「和邇」と略字で表記されていました。

駅周辺は、琵琶湖の和邇浜水泳場や集落が近く、浜大津駅から和邇駅までの区間列車が運行されていた時期もありました。現在、駅跡地は住宅地となり、かつての面影は駅舎の遺構や喜撰川に残る江若鉄道の橋台などわずかに残るのみです。

未成線計画

和邇駅から分岐し、京都府の二条駅に至る支線計画は、江若鉄道の大きな夢でした。しかし、実現には至りませんでした。この計画は、当時の鉄道整備計画においても検討されたものの、技術的・経済的な課題がクリアできず、実現には至らなかったという歴史的経緯があります。この計画が実現していたら、現在の交通網は大きく変わっていたかもしれません。

参考文献

今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』 9 関西2、新潮社、2008年
大津市歴史博物館 編『江若鉄道の思い出 ありし日の沿線風景』サンライズ出版、2015年
竹内龍三「私鉄車両めぐり(70) 江若鉄道」『鉄道ピクトリアル』第17巻第1号（通巻192号）、鉄道図書刊行会、1967年1月
田中真人、宇田正、西藤二郎「第16章 琵琶湖の首飾り―江若鉄道・湖西線」『京都滋賀 鉄道の歴史』京都新聞社、1998年
寺田裕一『新 消えた轍 ―ローカル私鉄廃線跡探訪―』 8 近畿、ネコ・パブリッシング〈NEKO MOOK〉、2010年
吉田恭一『地形図で辿る廃線跡 古地図とともにいまはなき鉄道を歩く』心交社、1998年
* 「江若鉄道 その車輛・列車・歴史・駅をめぐる」『レイル No.84』エリエイ/プレス・アイゼンバーン、2012年

まとめ

和邇駅は、江若鉄道の歴史を語る上で重要な駅でした。その歴史や周辺環境を知ることで、地域の変遷や鉄道の役割を考えるきっかけとなるでしょう。現在は廃線となり駅舎もなくなりましたが、その存在は、地域の記憶として、そして鉄道史の一ページとして残されています。 琵琶湖の美しい風景を眺めながら、かつて和邇駅に停車していた列車の姿を想像してみるのも良いでしょう。

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