咽頭音

調音部位と調音方法：音声学における子音の生成

音声学において、子音は声道の特定の部分を使ってどのように発音されるかによって分類されます。この分類は、調音部位と調音方法という二つの主要な側面に基づいています。ここでは、様々な調音部位と、特に議論の多い咽頭音について詳しく見ていきましょう。

調音部位

子音は、主に以下の調音部位を使って発音されます。

唇音: 唇を使って発音される音。両[[唇音]]（例：/p/, /b/, /m/）と唇歯音（例：/f/, /v/）が含まれます。
舌頂音: 舌の先端部分（舌尖、または舌端）を使って発音される音。舌唇音、歯間音、歯音、歯歯茎音、歯茎音、後部歯茎音、そり舌音などが含まれます。
舌背音: 舌の背の部分を使って発音される音。硬口蓋音、軟口蓋音、口蓋垂音などが含まれます。
咽喉音: 咽頭や喉頭を使って発音される音。咽頭音、喉頭蓋音、声門音などが含まれます。
二重調音: 二つの調音部位を同時に使って発音される音。例えば、両唇[[軟口蓋音]]などがあります。

調音方法

調音方法は、どのように空気が声道を通るか、また、どの程度障害を受けるかによって分類されます。例えば、破裂音、摩擦音、鼻音、接近音などがあります。

咽頭音について

咽頭音は、舌根を咽頭壁に近づけることによって調音される子音です。国際音声記号（IPA）では、[ħ]や[ʕ]などが咽頭音として記述されます。

咽頭音をめぐる議論

咽頭音、特にアラビア語の[ħ, ʕ]の調音位置については、古くから様々な議論がありました。従来の説では、これらは咽頭摩擦音とされてきましたが、喉頭蓋説や気管支説も提唱されてきました。

ピーター・ラディフォギッドらの研究では、X線写真や光ファイバーを用いた結果、これらの音は実際には喉頭蓋音であり、摩擦音ではなく接近音であると結論付けられました。一方で、アグール語のブルキハン方言では、咽頭摩擦音と喉頭蓋摩擦音が区別されることが指摘されています。

このような背景から、1989年に国際音声記号に喉頭蓋音の記号[ʜ, ʢ, ʡ]が追加されました。ラディフォギッドらは、アラビア語の音を[ħ, ʕ]ではなく[ʜ, ʢ]で表すべきだと主張しました。しかし、エスリングは喉頭鏡を使った研究で、いわゆる咽頭音と喉頭蓋音の違いは調音位置ではなく調音方法の違いであり、[ʜ, ʢ]は摩擦音ではなくふるえ音であるとしました。この説に従うと、アラビア語の音は従来の[ħ, ʕ]で表現することが適切となります。

国際音声記号における子音

国際音声記号（IPA）は、世界中の言語の音声を正確に記述するためのシステムです。子音は、調音部位と調音方法に基づいて体系的に分類され、それぞれに固有の記号が割り当てられています。このシステムを使うことで、言語間の音声の違いを明確に表すことができ、音声学の研究や言語教育に役立てられています。

まとめ

音声学における調音部位と調音方法は、子音を理解する上で非常に重要な概念です。咽頭音のように、調音位置や方法が複雑で、いまだに議論が続いている音も存在します。国際音声記号は、このような音声の複雑さを表現するための重要なツールであり、今後の研究によって、さらに詳しい音声の分類が明らかになることが期待されます。

参考文献

服部四郎『音声学 カセットテープ, 同テキスト付』岩波書店、1984年（原著1950年）。
* Ladefoged, Peter; Maddieson, Ian (1996). The Sounds of the World's Languages. Oxford: Wiley-Blackwell. ISBN 978-0631198154。

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