哀愁列車

哀愁列車（あいしゅうれっしゃ）

「哀愁列車」は、昭和を代表する人気歌手、三橋美智也氏によって1956年に世に送り出されたシングル盤に収められた楽曲です。

楽曲概要と成功

この歌は、三橋美智也氏がキャリアの絶頂期にあった頃を象徴する作品の一つと広く認識されています。発表後、瞬く間に多くの人々の心をとらえ、最終的なセールス数は驚異的な250万枚を突破しました。この記録は、同じ年に発表されミリオンセラーとなっていた「リンゴ村から」に続くものであり、氏が当時の音楽界でいかに圧倒的な存在であったかを示しています。

楽曲の大きな特徴として挙げられるのは、その印象的な歌い出しです。「惚れて～惚れて～」というフレーズから始まる冒頭部分は、氏の持ち味である高音域を存分に活かしたものであり、聴く者に強いインパクトを与えました。このメロディと歌唱法は、多くの人々に記憶され、長きにわたって歌い継がれる要因となりました。

派生と影響

「哀愁列車」の人気は音楽の枠を超え、他のメディアにも広がりました。楽曲のヒットを受けて、1957年5月13日には同名の映画が製作・公開されています。この映画では、当時人気を博していた俳優である川崎敬三氏が主演を務め、物語が展開されました。

また、日本の代表的な年末の音楽番組であるNHK紅白歌合戦においても、この楽曲は重要な場面で披露されています。三橋美智也氏は、この「哀愁列車」を引っ提げて1956年に記念すべき初出場を飾りました。さらに、時代が下って人気歌手として再び紅白の舞台に立った1974年にも再度歌唱され、通算二度にわたり多くの視聴者に届けられました。

シングル盤の情報

実は、「哀愁列車」はシングル盤としてはB面に収録されていました。この時期の三橋氏は、1955年に「おんな船頭唄」で初めての大ヒットを記録しており、「哀愁列車」もまた、B面曲でありながら大ヒットするという特異な成功を収めた楽曲群の一つです。シングル盤のA面には、女優の中川姿子氏が歌唱する、松竹映画『次男坊故郷へ行く』の主題歌「ふるさとはいいなァ」が収められていました。

収録曲とクレジットは以下の通りです。

A面：ふるさとはいいなァ
歌唱：中川姿子
作詞：矢野亮
作曲・編曲：林伊佐緒

B面：哀愁列車
歌唱：三橋美智也
作詞：横井弘
作曲・編曲：鎌多俊与

生涯最後の映像

歌手としての晩年、1995年9月11日に東京プリンスホテルにて開催された、タレントの玉置宏氏の芸能生活40周年を祝うパーティー『玉置節で40年!!』に三橋美智也氏は出演し、この「哀愁列車」を歌唱しました。この時の貴重なパフォーマンスの模様は、同年10月8日にテレビ東京系列で放送された特別番組『日曜ビッグスペシャル』内で放映されました。結果として、この時の「哀愁列車」の歌唱が、三橋美智也氏の生涯における最後のテレビ映像として記録されることとなったのです。このエピソードは、「哀愁列車」が単なるヒット曲に留まらず、三橋美智也氏の音楽人生を象徴する一曲であったことを物語っています。

この楽曲は、そのセールス記録、特徴的なメロディ、そして数々のエピソードを通じて、日本の歌謡史において確固たる地位を築いています。

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