哲宗 (朝鮮王)

哲宗（チョルジョン）

哲宗は1831年7月25日に生まれ、1864年1月16日に亡くなった李氏朝鮮の第25代国王である。彼の在位期間は1849年から1863年までで、本名は昪（ビョン、변）であり、初名は元範（ウォンボム、원범）であった。忠敬王という清国から贈られた諡号も持つ。彼は大韓帝国時代に哲宗章皇帝として追贈された。別名として江華道令（강화도령）も知られている。

生い立ちと家族背景

哲宗は英祖の庶子であり、全渓大院君と龍城府大夫人廉氏の三男として生まれた。異父の兄弟である恩彦君の子孫としての背景があり、彼自身も波乱万丈の家庭に育った。父の全渓大院君は様々な権力争いの中で数々の困難を経験し、彼自身も母の妾の子としての苦しみを抱えていた。このような複雑な家族背景が、後の彼の政治的運命に大きな影響を与えた。

即位と政治的背景

1849年6月9日、19歳で朝鮮国王に即位した哲宗は、政治に対する知識が不足しており、大王大妃の純元王后による垂簾聴政が始まり、その後も安東金氏の権力が優位に立っていた。親政を始めたのは即位から3年後だったが、実権は依然として安東金氏に握られていたため、政治権力の行使が非常に難しかった。

農民の反乱と哲宗の内政

その時代、国内では貪汚な官僚が台頭し、田政・軍政・還穀といった政策が乱れる中、洪水や干ばつといった自然災害も重なり民衆は苦しんでいた。民間では飢饉が広がり、反乱が全国で起こる事態に陥ったが、政治の上層部はその原因を見ようとはしなかった。哲宗もまた安東金氏の支配下で自ら動くことができず、苦しい状況が続いていった。

宗教の衝撃と哲宗の性格

その一方で、哲宗自身は民心に気を配る性格であり、カトリックに寛容な姿勢を示していた。カトリックは民衆や両班層の中に広がり、時として政治への影響を及ぼした。しかし、彼の周囲では権力者たちのカトリック弾圧が行われ、哲宗の支持層である南人も避けられ、次第に彼は酒色に溺れていくこととなった。

死とその後

1863年12月、哲宗は在位14年で33歳となる年に偉業のないまま死去した。彼の死後、王位は孝宗の系統から出ないこととなり、高宗が王位を継承する。哲宗が残した直系の子孫は永恵翁主一人だけとなり、事実上その系統は断絶してしまった。清国から贈られた諡号は政治的な意図が込められており、彼の在位中の記録からはこの諡号が徹底的に排除されていた。

家族と後継者問題

哲宗は政治的な問題や家族の困難に直面し続けた。正室として哲仁王后金氏を持ち、幾人かの子供を得たが、彼らは夭折する運命を辿った。哲宗には5人の息子と6人の娘がおり、ほとんどが生存できなかった。これにより、彼の直系は永恵翁主以外に残さぬ形となった。永恵翁主の死によって、哲宗の血統は完全に途絶えることとなった。

作品への影響

哲宗はさまざまなテレビドラマやフィクションに登場し、その時代の歴史的情景を映し出すキャラクターとして描かれることが多い。彼の生涯は、権力争い、政治の混乱、そして個人的な苦悩の象徴となっている。

このように哲宗は、李氏朝鮮の歴史の中で重要な位置を占める人物であり、彼の治世は国家としての複雑な課題に取り組む難しさを物語っている。

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