唐仁大塚古墳

唐仁大塚古墳（とうじんおおつかこふん）

概要

唐仁大塚古墳は、鹿児島県肝属郡東串良町新川西に所在する、古墳時代中期初頭（4世紀末頃）に築造された前方後円墳です。この古墳は、唐仁古墳群を構成する約130基の古墳の中でも最大規模を誇り、古墳群の中心的な存在として位置づけられています。古墳は、大隅半島東岸の志布志湾に面した、肝属川下流左岸の砂丘上に築かれており、その規模は鹿児島県内最大、九州地方においても第3位となっています。

墳丘と構造

墳丘は、前方部が未発達な柄鏡形の形状をしています。古墳の正面は南向きで、段築構造であったと考えられていますが、現在では確認できません。墳丘は3段に築かれており、その長さは140メートル（推定復元では154メートル）に及びます。墳丘の表面には葺石が施されていますが、埴輪は発見されていません。古墳の周囲には周濠が巡らされており、周濠を含めた古墳全体の長さは185メートルにも達します。

埋葬施設としては、後円部墳頂の大塚神社下に竪穴式石室が存在します。石室の蓋石は5枚露出しており、石室内部には砂岩製の舟形石棺が置かれていました。この石室からは、横矧板鋲留短甲などの貴重な遺物が出土しています。また、竪穴式石室とは別に、直交する形で箱式石棺も確認されており、複数の埋葬形式が用いられていたことがわかります。

歴史的背景

唐仁大塚古墳は、古墳時代中期初頭に築造されたと推定され、この古墳の築造を契機として、唐仁古墳群全体の営造が始まったと考えられています。古墳群の首長墓系譜は、1号墳（大塚）から100号墳（役所塚）、16号墳（薬師堂塚）へと続いています。また、南九州地方においては、生目古墳群に後続し、西都原古墳群に先行する盟主墳と位置づけられており、築造当時は九州地方で最大規模の古墳でした。

遺跡の歴史

古墳の存在は明治末期に認知され、1923年には瀬之口伝九郎によって報告されました。1928年には竪穴式石室の開蓋調査が行われ、1934年には唐仁古墳群が国の史跡に指定されました。その後、1992年には墳丘の測量調査が実施され、古墳の詳細な構造や規模が明らかになっています。

墳丘の規模

墳丘の規模は以下の通りです。

墳丘長：140メートル（推定復元154メートル）
後円部径：約80メートル
前方部幅：約60メートル

周辺の古墳

唐仁古墳群の北方には、大型の前方後円墳である横瀬古墳が、南方には日本最南端の前方後円墳を含む塚崎古墳群が分布しています。

まとめ

唐仁大塚古墳は、鹿児島県を代表する巨大な前方後円墳であり、その規模や構造、出土品は、当時の社会や文化を理解する上で非常に重要な情報を提供しています。古墳時代中期初頭の南九州における勢力関係や文化交流を考える上で、欠かせない遺跡の一つと言えるでしょう。

関連情報

唐仁古墳群（国の史跡）
横瀬古墳
塚崎古墳群

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