唐山市

唐山市：歴史と産業が息づく都市

唐山市（とうざんし、タンシャンし）は、中華人民共和国河北[[省]]に位置する地級市です。環渤海の中心に位置し、渤海湾に面した沿海都市として、また北京からも比較的近い距離にあることから、重要な経済拠点となっています。

地理

唐山市は、南北約160キロメートル、東西約120キロメートルに広がり、その面積は13,472平方キロメートルと、紀伊半島に匹敵します。南は渤海湾に面し、海岸線は196.5キロメートルに及びます。京唐港と唐山曹妃甸港という二つの重要な港を擁し、沿海都市としての役割を担っています。北は燕山山脈に接し、万里の長城がその境界となっています。西は天津市から約100キロメートル、北京市から約150キロメートルの距離に位置し、人口4000万人を有する環渤海経済圏の中心的な都市の一つです。

歴史

唐山市の歴史は古く、4万年前から人類が居住していた痕跡が発見されています。殷周時代には、孤竹国という侯国の首府が置かれていました。戦国時代には燕国の領土となり、漢代には幽州に、南北朝時代には右北平郡や遼西郡に編入されました。隋・唐時代には高句麗への前哨基地や遠征基地として利用され、明代には鉄鉱石の精錬や石炭の採掘、陶磁器生産の中心地として発展しました。

清代には、開平鎮に炭鉱が開かれ、中国初の標準軌鉄道である唐胥鉄道が建設されるなど、近代産業の発祥地となりました。1899年には唐山鎮と改称され、1938年に市制が施行されました。1948年には中国共産党軍に占領され、1960年に省轄市として再編されました。

しかし、1976年7月28日には、マグニチュード7.8の直下型地震である唐山地震に見舞われ、市内は壊滅的な被害を受けました。この地震では、市内で14万8000人、全体で24万人以上という甚大な犠牲者が出ました。その後、市は復興に向けて再建が進められ、抗震記念碑や抗震記念館が建てられました。また、1990年代には高新技術開発区が建設され、近年では日本企業も進出しています。

2022年には、市内の飲食店で発生した女性リンチ事件が社会問題となり、その影響で全国文明都市の資格を剥奪されるという出来事もありました。

行政区画

唐山市は、7つの市轄区、3つの県級市、4つの県を管轄しています。

市轄区

路北区
路南区
古冶区
開平区
豊南区
豊潤区
曹妃甸区

県級市

遵化市
遷安市
灤州市

県

灤南県
楽亭県
遷西県
玉田県

経済

唐山市は、中国有数の重化学工業都市であり、2008年にはGDPが3,560億人民元に達しました。主要な産業は、製鉄業、石炭採掘、電力・ガスなどのエネルギー産業、機械工業、化学工業、食品産業、電子電器工業、建材工業、陶磁器工業、紡績工業などです。また、農業も盛んであり、「京東の食糧庫」と呼ばれています。特に栗の生産量が多く、日本へも多く輸出されています。漁業も盛んで、渤海湾沿岸ではヒラメやエビ、カニなどが養殖されています。

鉱業

唐山市は、豊富な鉱物資源に恵まれており、石炭の埋蔵量は54億トン、鉄鉱石は45億トンと、中国有数の産出量を誇ります。また、金やマンガン、銀、銅、アルミなどの金属鉱石や、石灰石、白雲岩、石英砂岩などの非金属鉱物も産出されます。中でも開灤炭鉱は中国初の近代炭鉱であり、石炭産業は市を支える重要な産業です。

製鉄業

唐山市は、中国有数の鉄鋼生産拠点であり、1943年には中国初の高炉製鉄所である唐山鋼鉄（唐鋼）が創設されました。2008年には、唐鋼と邯鄲鋼鉄が経営統合し、河北鋼鉄集団が発足しました。さらに、首鋼集団の製鉄所が唐山市内に移転し、曹妃甸には大規模な製鉄所が建設され、河北鋼鉄集団の生産量は中国最大となっています。

エネルギー産業

唐山市には、石炭火力発電所や水力発電所が多数設置されており、安定した電力供給が行われています。また、渤海海底からは石油や天然ガスが発見され、海底油田開発も進められています。

機械工業

唐山市の機械工業は、蒸気機関車の生産から始まり、現在は鉱業機械、建設機械、自動車関連、セメント製造など、幅広い分野で発展しています。特に唐山軌道客車有限責任公司は、高速鉄道車両「和諧号」を生産しています。

化学工業

化学工業は、製塩業を初め、苛性ソーダ工場やタールを原料とした化学工業が発達しています。現在では、化学工業原料、化学肥料、化学農薬、化学繊維など多岐にわたる製品が生産されています。

陶磁器工業

唐山市は、「北方の陶都」と称される陶磁器生産の中心地です。特に衛生陶器の生産量は中国一であり、各種食器や美術磁器なども生産されています。毎年、「中国陶磁器博覧会」が開催されています。

建材工業

唐山市は、セメントの生産が盛んであり、2010年現在では110社のセメント生産企業が稼動しています。また、製鉄業を支えるべく、溶鉱炉スラグセメントなどの熟料セメントの生産も拡大しています。

教育

唐山市には、河北理工大学、華北石炭医学院、唐山師範学院、唐山学院の4つの本科大学と、5つの職業技術学院が存在します。また、清華大学や北京大学の通信教育も受講できます。1902年に創立された「唐山鉄道学院」は、中国初の鉄道学校として、多くの人材を輩出しました。

交通

唐山市は、中国の東北地方と華東、華中、華南、西北、西南を結ぶ交通の要衝であり、鉄道、高速道路、空路、海路が整備されています。

鉄道

市内には、西駅、北駅、南駅、貨物駅があり、旅客線以外にも石炭専用線が存在します。2013年には津秦旅客専用線が完成し、北京や天津へのアクセスが向上しました。

高速道路

市街地を囲む環状高速道路から、各方面への高速道路が分岐しており、京瀋高速道路、唐津高速道路、唐承高速道路、唐山沿海高速などが利用できます。

空路

唐山空港からは、上海、広州、西安など中国の主要都市と連絡されており、北京首都国際空港や天津浜海国際空港へもアクセス可能です。

海路

渤海湾沿岸には、京唐港と曹妃甸港が設置されており、特に曹妃甸港は中国最大の深水港を目指して建設が進められています。

古跡・観光地

唐山市には、清東陵（明・清王朝の皇帝墓群）、万里の長城、青山関、景忠山などの歴史的建造物や観光地があります。また、李大釗記念館など、歴史的な人物を記念する施設もあります。

伝統文化

唐山市には、「皮影」や「評劇」などの伝統文化が受け継がれています。

姉妹都市

日本の山形県酒田市は、1976年に大火災と大地震を経験したという共通の歴史から、唐山市と姉妹都市となっています。

唐山市は、歴史と産業が息づく魅力的な都市であり、今後もさらなる発展が期待されています。

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