唯円

唯円（ゆいえん）は、鎌倉時代に浄土真宗を広めた僧侶であり、同時代に複数の唯円が存在したことが知られています。特に有名なのは、『歎異抄』の著者として伝えられる人物ですが、その特定は困難です。ここでは、記録に残る二人の唯円、すなわち河和田の唯円と鳥喰の唯円について解説します。

河和田の唯円

河和田の唯円（かわわだのゆいえん、1222年 - 1289年）は、親鸞聖人の晩年の弟子の一人です。親鸞の孫である唯善の師としても知られています。『慕帰絵詞』によれば、1288年に常陸国から京都へ上洛した際、本願寺の覚如と仏教の教義について深く議論しました。『歎異抄』の著者は特定されていませんが、一般的には河和田の唯円によるものとされています。彼は常陸国河和田（現在の茨城県水戸市）に住んでいたことから、この名で呼ばれました。晩年は大和国吉野で布教活動を行い、秋野川付近で亡くなったと伝えられています。

また、大正時代の劇作家・倉田百三は、親鸞と河和田の唯円の関係を題材にした戯曲『出家とその弟子』を執筆しています。

鳥喰の唯円

鳥喰の唯円（とりはみのゆいえん、生没年不詳）は、俗名を橋本綱宗といい、武士であったと伝えられています。武蔵楢山城主であったという説もあります。常陸国鳥喰（現在の茨城県那珂市豊喰）に住んでいたため、鳥喰の唯円と呼ばれました。子供を亡くしたことをきっかけに無常を感じ、親鸞の弟子となったとされています。彼は二十四輩の一人として数えられており、常陸国太田に西光寺を建立したと伝えられています。

このように、唯円という名前を持つ僧侶は複数存在し、それぞれが異なる背景と足跡を持っています。彼らの事績は、鎌倉時代の浄土真宗の広がりを理解する上で重要な手がかりとなります。

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