覚如

覚如：浄土真宗における本願寺教団の礎を築いた僧侶

覚如は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて活躍した浄土真宗の僧侶であり、その名は日本の仏教史に深く刻まれています。浄土真宗本願寺派第3世宗主、真宗大谷派第3代門首、真宗木辺派第3代法主という重要な地位を歴任し、大谷本願寺の住職も務めました。

覚如の出自と生い立ち

覚如は、文永7年（1271年）京都で誕生しました。幼名は光仙。著名な浄土真宗の祖、親鸞の末娘である覚信尼の子、覚恵の長男であり、親鸞の曾孫にあたります。母は周防権守中原某の娘でした。5歳の時に母と死別。幼少期から仏門の道を志し、天台宗や法相宗の教えを学びました。延暦寺の宰相法印宗澄や興福寺一乗院の信昭など、当時の著名な僧侶に師事し、幅広い仏教知識を修得していきました。弘安9年（1286年）、奈良興福寺一乗院で出家・受戒し、「覚如房宗昭」と号しました。その後、親鸞の孫である如信から親鸞の教えを学び、さらに各地の僧侶から様々な仏教思想を学んでいきます。

本願寺成立への貢献と教団の確立

覚如は、永仁2年（1294年）親鸞の33回忌に際し、『報恩講私記』を撰述しました。これは、現在まで続く報恩講の始まりとされています。この頃から、覚如は自らを親鸞の後継者と意識するようになりました。その後も、『本願寺聖人伝絵』などの著作を通して、親鸞の教えと本願寺教団の正統性を主張し続けました。

覚如は、大谷廟堂の寺院化（本願寺の成立）に多大な尽力を行いました。これは、単なる建物の改修ではなく、浄土真宗における教団の組織化、制度化を意味する重要な出来事でした。覚如は、この過程で様々な困難に直面しました。特に、唯善との間で勃発した留守職就任問題（唯善事件）は、覚如の指導力と決断力を試す大きな出来事でした。この争いは、青蓮院（大田説では妙香院）による裁定を経て覚如が勝利するものの、東国門徒の抵抗もあり、覚如は留守職就任を承認させるため、東国への勧進に赴くなど、多大な労力を費やしました。

著作活動と教義の確立

覚如は、数々の著作を残しており、それらは浄土真宗の教義を理解する上で重要な資料となっています。代表的な著作としては、『報恩講私記』、『本願寺聖人伝絵』（『御伝鈔』・『親鸞伝絵』）、『執持鈔』、『口伝鈔』、『改邪鈔』などがあります。これらの著作を通して、覚如は法然の正統な後継者としての親鸞の地位、そして本願寺教団の優位性を力強く主張しました。『口伝抄』においては「三代伝持の血脈」を表明し、法然から親鸞、如信へと受け継がれてきた法灯が、自分へと継承されたことを明確に示しました。

後継者問題と晩年

覚如は、長男の存覚に留守職を譲渡しましたが、その後、意見の相違から存覚と義絶するなど、後継者問題にも苦悩しました。しかし、最終的には存覚と和解し、その子の善如に別当職を継承させました。建武年間には足利尊氏の戦乱を避けて近江に疎開するなど、波乱に満ちた生涯を送りました。

観応2年（1351年）、82歳で入滅しました。覚如の死後も、彼の築いた本願寺教団は発展を続け、現代の浄土真宗に大きな影響を与え続けています。彼の功績は、単に寺院を建設したというだけでなく、浄土真宗の教義を体系化し、教団を確立した点にあります。その功績は、現在でも高く評価されています。

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