商品有高帳

商品有高帳

商品有高帳（しょうひんありだかちょう）は、企業の会計処理において使用される帳簿の一つで、特に商品の在庫管理に特化した記録です。これは、企業の会計帳簿を分類する際に「補助簿」に位置づけられる帳簿であり、主要簿である仕訳帳や総勘定元帳とは異なり、法律によってその作成が義務付けられているわけではありません。しかし、多くの企業では、正確な在庫状況を把握し、適切な原価計算を行うために、この商品有高帳を任意で作成・活用しています。

この帳簿の最も基本的な役割は、企業が扱う様々な商品を種類ごとに区分し、それぞれの商品の入庫（仕入）、出庫（売上などによる払い出し）、そして現時点での正確な在庫数を、発生順に記録していくことにあります。数量だけでなく、商品の経済的な価値を示す払出単価（出庫単価）に関する情報も併せて記録されます。

商品有高帳への記入は、商品の仕入原価に基づいて行われるのが基本的なルールです。具体的には、商品を仕入れた際には、その商品の数量、単価、合計金額が「受入」欄に記録され、在庫が増加したことが示されます。商品が販売されるなどして在庫から払い出される際には、「払出」欄にその数量と、特定の計算方法によって算出された払出単価、合計金額が記入され、在庫が減少したことが記録されます。そして、常に「残高」欄で現在の在庫数量と評価額が更新されます。

記入にあたっては、仕入原価に影響を与える取引は商品有高帳に反映されます。例えば、仕入れた商品に欠陥が見つかるなどして値引を受けた場合（仕入値引）は、商品の取得原価が減少したと見なされ、商品有高帳にもその修正が記録されます。一方、販売した商品について得意先に値引を行った場合（売上値引）は、これは売上高の調整であり、商品の原価や在庫そのものには影響しないため、商品有高帳には記載されません。このように、仕入と売上における値引の性質の違いが、商品有高帳への記入ルールに影響を与えます。

商品有高帳を作成する上で重要なのが、払い出される商品の単価をどのように決定するかという点です。同じ商品でも、仕入れた時期やロットによって単価が異なることは珍しくありません。そのため、どの単価で商品が払い出されたと見なすかを計算する方法が必要となります。この払出単価の計算方法にはいくつかの種類があり、企業はいずれかを選択して適用します。代表的な方法としては、先に仕入れた商品から順に払い出されたと仮定する先入先出法（FIFO）や、仕入の都度、在庫全体の平均単価を再計算し、その平均単価で払い出すと仮定する移動平均法などがあります。選択した計算方法によって、払い出される商品の金額（売上原価）や、期末に残る在庫の評価額が異なります。

商品有高帳を正確に記録し、これを活用することで、企業は単なる在庫数の把握を超えた重要な情報を得ることができます。例えば、一定期間に「払出」として記録された合計金額は、その期間に販売された商品の原価、すなわち売上原価の計算に直結します。そして、売上高からこの売上原価を差し引くことで、企業の収益性を示す重要な指標である売上総利益を算出することが可能となります。このように、商品有高帳は在庫管理のみならず、企業の経営成績を分析するための基礎情報を提供します。

補助簿としての商品有高帳は、主要簿である総勘定元帳の「商品」勘定の残高の明細を詳細に記録したものです。総勘定元帳の「商品」勘定の残高が、商品有高帳上の全商品の在庫金額の合計と一致することを確認することで、帳簿間の整合性を検証し、記録の正確性を高めることができます。商品有高帳を適切に作成・管理することは、正確な棚卸資産の評価や、期末の正確な売上原価計算、ひいては適正な財務諸表を作成するために不可欠です。また、実務面では、リアルタイムに近い在庫状況の把握による適切な発注計画、過剰在庫の抑制、品切れの防止、さらには商品の入出庫記録の透明性確保による不正や誤りの早期発見といったメリットも得られます。

このように、商品有高帳は法的に義務付けられた帳簿ではありませんが、商品の動きが活発な企業においては、適切な在庫管理、正確な原価計算、そして企業の収益性分析を効果的に行う上で、非常に重要な役割を果たす補助元帳と言えます。

• ---

関連項目

棚卸資産
売上原価
買掛金元帳
仕入帳
* 買掛金

もう一度検索