上からの改革

上からの改革とは

上からの改革とは、一般的に革命家や被抑圧者ではなく、保守的とされる君主や官僚などによって主導される改革を指します。本来、政治変動の推進力とは考えにくい人々が改革を行う背景には、いくつかの理由が存在します。

上からの改革の動機

体制維持: 改革派の要求を一部受け入れることで、穏健派との和解を図り、急進派の影響力を削ぎます。これにより、大規模な革命を回避し、自身の地位を安泰に保つことが目的です。民衆の要求が高まる中で、改革を拒み続けると、急進派の勢力が増し、革命によって地位を失う危険性があります。一時的な改革という小さな犠牲を受け入れることで、現体制の崩壊という大きな犠牲を防ぐのです。
対抗勢力の抑制: 大富豪や貴族など、自身の地位を脅かす強大な勢力が台頭してきた際に、彼らの統治に反感を抱く民衆の支持を取り付け、闘争を有利に進めるために行われます。ヨーロッパでは、近代に絶対王政が崩壊すると、地方の地主が力を付け、君主に対して反抗するようになりました。これに対抗するため、君主は民衆に恩恵を施し、権威を高める必要に迫られました。この傾向は特にドイツで顕著でした。
主導権の確保: 上層の人々自身が具体的な改革の内容に関与できるという利点があります。改革の主体が自分自身であるため、必ずしも民衆の要求の全てを実行に移す必要はありません。政策に対して自由に裁量権を行使できるため、都合の良いように改革を進めることができます。
人道的動機: 利己的な動機ではなく、純粋に人道的な意識から改革が行われることもあります。

上からの改革の問題点

現代の用法では、「上からの改革」という言葉は、国家権力によって歪められた改革、中途半端に終わった改革という否定的な意味合いを伴うことが多くあります。最終的に十分な改革が行われた場合には、主導者が誰であれ、「上からの改革」とは呼ばれない傾向があります。例えば、初期のフェミニズムの興隆は、ジョン・スチュアート・ミルやアウグスト・ベーベルなど男性の知識人の貢献によってもたらされたものであり、奴隷制の廃止は主に自由人が中心となって進められましたが、これらを「上からの改革」と呼ぶことは一般的ではありません。

通常は国政に関する改革に限り使われる言葉ですが、企業その他の団体における改革であっても、俗に「上からの改革」と呼ばれることがあります。この場合は、より否定的な意味合いを伴います。

上からの改革の事例

プロイセン王国のフリードリヒ2世の改革
オスマン帝国のタンジマート
タイのチャクリー改革
ロシア帝国のアレクサンドル2世の農奴解放、ストルイピン改革
日本の明治維新
清の戊戌の変法
イランのパフラヴィー2世による白色革命
チェコスロバキアのプラハの春
ソビエト連邦のペレストロイカ・グラスノスチ
カンボジアのノロドム・シハヌークによる仏教社会主義政策
中華民国（台湾）の蔣経国による体制の土着化、それに続く李登輝による民主化

関連事項

啓蒙専制君主
明治維新#政治状況
レーガノミクス、サッチャリズム、ロジャーノミクス
大きな政府、小さな政府、混合経済
開発独裁

上からの改革は、社会の変革をもたらす一方で、その過程や結果には様々な問題点も存在します。改革の評価は、その動機や手法、そして最終的な成果を総合的に判断する必要があるでしょう。

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