善光寺白馬電鉄

善光寺白馬電鉄株式会社：鉄道から物流へ、そして未来へ

善光寺白馬電鉄株式会社は、長野県長野市に本社を置く総合物流企業です。現在の事業の中心は貨物自動車運送事業ですが、その歴史は昭和初期の長野市内を走る鉄道会社として始まりました。本稿では、同社の歴史、事業内容、そしてその軌跡をたどります。

鉄道事業：夢半ばで終止符

善光寺白馬電鉄の前身は、大正時代に計画された鬼無里鉄道に遡ります。長野市と白馬村を結ぶことを目指したこの計画は、第一次世界大戦後の不況により頓挫。しかし昭和初期、再び計画が持ち上がり、1927年に鉄道敷設免許を取得。長北鉄道として設立後、善光寺白馬電鉄と社名を変更し、1929年に会社が設立されました。

当初は全線電化を計画していましたが、資金難からガソリンカーを使用することになり、1936年11月22日、南長野駅と善光寺温泉東口駅間で営業を開始しました。白馬村までの延伸も計画されていましたが、資金難や山岳地帯の難工事などから、1942年12月17日に裾花口駅まで延伸した後、太平洋戦争下の企業整備により1944年1月10日に休止、そして1969年7月9日に廃線となりました。わずか7年間の実営業は、壮大な計画とは裏腹に短いものでした。

休止に際しては、レールなどの資材がオランダ領インドシナに送られたという記録も残っています。また、戦時中には皇族の疎開施設としてトンネルを利用する計画もあったものの、実現しませんでした。

戦後、地元自治体や関係者による復活運動が活発に行われましたが、裾花ダム建設決定により休止線区間の復活も困難となりました。計画された信越西線計画も実現せず、善光寺白馬電鉄の鉄道事業は完全に終焉を迎えたのです。

地元では「善白（ぜんぱく）」の愛称で親しまれ、その歴史は現在も、バス路線や残存する遺構を通じて偲ぶことができます。

現在の事業：物流企業として発展

鉄道事業の休止後、善光寺白馬電鉄は貨物自動車運送事業へと転換しました。現在は運送業、引越運送業を主力とし、倉庫業、自動車整備業、流通加工業なども展開しています。松本支店、南営業所、上田営業所と、長野県内に複数の拠点を持ち、地域経済に貢献しています。関連会社として長野運送（通称「マルナ」）、上田運送、リンギョーなどがあり、それぞれの事業で地域社会を支えています。

歴史的意義と未来への展望

善光寺白馬電鉄の歴史は、夢と挫折、そして新たな挑戦の歴史です。白馬村への鉄道開通という夢は叶いませんでしたが、その歴史は、地域の交通史、そして企業史において重要な位置を占めています。現在では、物流企業として安定した基盤を築き、地域社会の発展に貢献しています。

残された遺構は、かつて存在した鉄道の面影を偲ばせる貴重なものです。第一～第四トンネル、橋脚など、当時の姿を伝える痕跡は、歴史を学ぶ上で重要な役割を果たしています。

善光寺白馬電鉄は、過去の経験を活かし、未来へ向けて新たなステップを踏み出していくことでしょう。物流事業の更なる発展、そして地域社会への貢献を通して、その歴史に新たな1ページを刻んでいくことでしょう。

資料

柏企画（編）『思い出で包む善白鉄道』柏企画、2006年
長野県教育委員会『歴史の道調査報告書』 XVI 戸隠道
今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』 6 北信越、新潮社、2008年
小林宇一郎・宮沢元和「善光寺白馬電鉄」『鉄道ピクトリアル』No148
* 小林宇一郎・小西純一郎監修『信州の鉄道物語』信濃毎日新聞社、1987年

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