善導寺駅

善導寺駅：歴史と祈りが交差する久留米の駅

福岡県久留米市善導寺町飯田にあるJR九州久大本線の善導寺駅は、1928年（昭和3年）に開業した歴史を持つ駅です。開業当初は国有鉄道の駅として、多くの旅客と貨物を扱い、地域経済を支える重要な役割を担っていました。1971年には業務委託駅となり、国鉄OBや職員が駅業務に従事していましたが、その後無人駅となりました。

現在では無人駅となっていますが、古き良き時代の面影を残す木造駅舎は、かつての賑わいを偲ばせます。駅舎の一部は解体されましたが、待合所部分は残っており、解体された跡地には木々が植えられています。この駅舎は、昭和初期の建築様式を感じさせ、歴史を感じさせる貴重な存在です。

かつては、貨物取扱いの盛んな駅として知られていました。特に、1966年に完成したカゴメのソース工場の最寄り駅であったことから、多くの貨物列車が発着していました。しかし、時代の変化とともに貨物輸送は廃止され、現在の静かな佇まいへと変わっていきました。

2012年にはSUGOCAが導入され、利便性が向上しました。しかし、当駅ではICカードの購入やチャージはできません。久留米駅方面からの利用が原則となっており、久大本線、日田彦山線、後藤寺線を経由して他の駅へ行くことは可能ですが、途中下車できません。

駅舎内には、1996年に善導寺開基800年を記念して行われた大法要で、地域住民が作成した数珠が飾られています。全国から集められた数珠玉には、人々の願いが込められており、静寂の中で静かに祈りを捧げる人々の姿が想像されます。この数珠は、駅舎の歴史と地域の人々の信仰心の深さを象徴する貴重なものです。

駅舎の改築もされており、現在では多目的トイレと男女別の水洗トイレが設置され、利用者の利便性が向上しています。ホームは相対式2面2線で、久留米～善導寺間の折り返し列車が設定されています。ホーム間の移動は跨線橋で行います。

駅周辺には、浄土宗大本山である善導寺や、久留米市立屏水中学校、善導寺郵便局、久留米市役所耳納市民センター、サニー善導寺店といった施設があります。また、駅へのアクセス道路として、福岡県道720号善導寺停車場耳納線と福岡県道740号上高橋善導寺停車場線が整備されています。

さらに、善導寺駅は映画のロケ地としても使用された歴史があります。2002年には役所広司主演の『EUREKA（ユリイカ）』、2007年には津田寛治主演の『Watch with Me 〜卒業写真〜』の撮影が行われました。これらの映画を通じて、善導寺駅は全国的に知られるようになりました。

1974年の1日平均乗降客は約400人でしたが、2021年度の1日平均乗車人員は255人となっています。近年は、利用客数の減少が課題となっていますが、歴史的建造物としての価値や、地域住民の生活の拠点としての役割は依然として重要なものとなっています。

善導寺駅は、歴史と静けさ、そして地域の人々の信仰心が共存する、独特の雰囲気を持つ駅です。訪れる人々に、穏やかな時間と、静かな感動を与えてくれる場所と言えるでしょう。

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