善玉悪玉

善玉悪玉とは

善玉悪玉（ぜんだまあくだま）とは、心の中の善や悪を擬人化したキャラクターを指します。この概念は善人を「善玉」とし、悪人は「悪玉」として表現され、善悪の二元的な関係を非常に直截的に描写しています。また、この用語は小説や映画のキャラクターにまで広がり、善行を示す存在と、逆に悪行を示す存在を区別する際にも使われるようになりました。

現代における善玉悪玉

現代社会では「善玉悪玉」という言葉は、人体における腸内細菌の種類を分類する際にも使われています。たとえば、健康に良いとされる細菌群、具体的にはビフィズス菌などは「善玉菌」と呼ばれ、逆に悪影響をもたらすブドウ球菌やウェルシュ菌は「悪玉菌」とされます。さらに、コレステロールにおいても同様に「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」が存在し、その分類が日常的に行われています。

由来

「善玉悪玉」のアイデアは、町人への道徳教育を目的とした心学から派生しました。この概念は寛政の改革に影響を受け、寛政2年（1790年）に山東京伝が制作した教訓的草双紙『心学早染草』に初めて具体的に表現されました。その物語では、善なる魂に囲まれた主人公が悪魂に飲み込まれ、堕落し、最終的に善を取り戻して幸せな人生を送るというストーリーが展開されます。

挿絵の中では、善玉と悪玉が主人公の腕を引き合い、心における葛藤を表現しています。悪玉が3人で悪を示し、善玉は一人で引き役を果たすことから、悪が優勢であることがわかります。

悪玉踊りと風俗

文化8年（1811年）、江戸の市村座で悲劇の中でも明るいリズムを持つ歌舞伎舞踊「七枚続花の姿絵」が初演され、「願人坊主」という曲の中に悪玉の踊りが登場しました。この踊りは当時の観客に大きな印象を残し、文化12年（1815年）の北斎の作品『踊獨稽古』ではその踊り方についても詳しく解説されています。また、この曲を清元に改作した「浮かれ坊主」でも悪玉の踊りが見られるなど、特に江戸時代の文化においては非常に重要な要素となっていることがわかります。

三社祭とその影響

「善玉悪玉」をテーマにした歌舞伎舞踊『彌生の花浅草祭』、通称『三社祭』は、天保3年（1832年）に初演されました。この舞踊では善玉と悪玉が賑やかに踊る様子が描かれ、特に庶民の間で人気を博します。このことにより「善玉悪玉」という言葉が一般に広まるきっかけとなりました。この舞踊そのものが『善玉悪玉』と呼ばれることも多く、文化的な寄与が評価されています。

まとめ

善玉悪玉という概念は、単なるキャラクターの表現を超えて、現代社会まで影響を及ぼしており、心の葛藤や健康に関する理解を深める重要なキーとなっています。このようにして、善悪の二元論は私たちの生活の中で常に影響を与え続けています。

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