善隣学生会館事件

善隣学生会館事件の詳細な解説

善隣学生会館事件は、1967年の2月28日から3月2日までの間、東京・文京区にある善隣学生会館で発生した流血事件です。この事件は、日本共産党の傘下である日中友好協会と、中国共産党の運動を支持する在日華僑学生らとの間で起こりました。

背景

善隣学生会館は1935年に満洲国の皇帝の寄付で設立され、その後日本の敗戦を経て中国人留学生のための寮としても機能していました。この会館は日中友好を推進する場として機能し、様々な学生団体が利用していましたが、1966年以降は日本共産党と中国共産党の間の政治的対立が影響し始めます。

日本共産党は毛沢東政権との関係を断ち、中国側の主導による日中友好の活動に反発していました。これにより、当会館は日中友好の名の下で様々な団体が入り混じることとなり、対立が激化していきました。特に、バラバラになった日中友好協会において、正統派と称するグループと日本共産党派の間での緊張関係が深まります。

事件の経過

事件は1967年2月28日、華僑学生たちが日中友好協会の行動に対して反発する形で壁新聞を掲示したことから始まりました。この新聞は、日中友好協会を「ニセ日中」と非難する内容が書かれていました。これに日本共産党派のメンバーが激しく反発し、両者の間で言い争いが起き、暴力事件へと発展しました。

翌3月1日には、華僑の学生らと友好団体のメンバーが集まり抗議集会を開きますが、夜遅くには日の共産党員が大量に動員され、会館を取り囲む事態に。会場の周囲には約500名の日本共産党支持者が集まり、華僑学生らに対して「中国人は出ていけ」と叫ぶなどの混乱が続きました。

3月2日、日中友好協会の事務所から、武装した支持者たちが飛び出し、華僑学生たちに対する激しい暴行を行い、結果として7名の重傷者が出る事態に至ります。この事件は日本の政治的緊張の象徴とも言えるものであり、後に様々な議論や分析がなされることになります。

双方の主張

事件発生後、日本共産党側は華僑学生による日中友好協会への襲撃があったと主張しましたが、華僑学生側はこの襲撃がなかったと反論。「正当防衛」を唱える日本共産党は、暴力行為を正当化しようとしましたが、彼らの行動は多くの批判を呼びました。この事件が発端となり、後の全共闘運動における学生間の武力衝突が続く背景ともなりました。

学者・文化人の反応

事件後、井上清をはじめとした歴史学者や文化人が日本共産党の行動を非難し、社会問題として取り上げられました。彼らは軍国主義的な行動が復活しつつあると警鐘を鳴らしました。特定の学生団体の行動に対する批判が強まり、社会の中での歴史的意義が再認識される契機となりました。

和解とその後

事件は訴訟を介して善隣学生会館が日中友好協会に退去を求めるに至り、結果、1970年に和解が成立。その後も日本共産党と中国共産党の関係は断絶されましたが、1990年代後半には若干の改善が見られるようになりました。

今日では、この事件は日中間の関係や共産党における内部の対立、さらには冷戦時代の影響を理解するための重要な事例と位置付けられています。

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