営団03系電車

営団03系電車は、1988年に帝都高速度交通営団（営団、現東京メトロ）が日比谷線に導入した通勤形電車です。老朽化した3000系の置き換えと、増加する輸送需要に対応するため、また日比谷線車両の冷房化推進を目的に開発されました。2004年の営団民営化に伴い、東京メトロに承継されました。

概要

製造メーカーは、初期の2編成が川崎重工業と日本車輌製造で、それ以降は近畿車輛と東急車輛製造が担当しました。編成は、全車両が3扉の編成と、両端2両が5扉車の編成の2種類が存在しました。1980年代後半、日比谷線の混雑は深刻化しており、駅施設の改良やダイヤ改正による輸送力増強策に加えて、03系の投入が決定されました。

当時、銀座線用の01系をベースとした東西線用新型車両（05系）の開発が進められていたため、03系の基本的な設計や機器は05系と共通化されました。当初は3000系の車齢30年となる1990年頃の投入が検討されていましたが、時期が前倒しされたため、製造期間は約10ヶ月と非常に短く、設計担当者には大きな負担となりました。設計にあたっては、当時技術面やデザイン面で評価の高かった3000系を意識し、「ハイクォリティ」・「アダルトセンス」をテーマに開発が進められました。

1989年には、鉄道友の会グローリア賞を受賞しています。これは03系だけでなく、同時期に開発された01系、02系、05系といった営団の新系列車両全体に対する評価として贈られました。

車両概説

車体

全長18m、片側3扉のアルミ製車体で、直流1,500Vの架線集電方式を採用しています。8両編成を組成し、MT比は4M4Tです。車体はアルミニウムの大型押し出し形材を使用し、ミグ溶接で組み立てられています。外観は、曲線的な前面形状やフロントガラスなど、3000系のイメージを継承しています。前面ガラス上部には、行先表示器と運行番号表示器、車両番号の窓が設けられ、周囲を黒く塗装することで一体感を出しています。前面には、地下鉄線内での非常脱出用のプラグドアが設置されています。車体には、日比谷線のラインカラーであるシルバー（グレー）を基調に、ダークブラウンとアイボリーの細い帯がアクセントとして配されています。

行先表示器は、初期の車両では日本語とローマ字併記の字幕式でしたが、後期型ではLED式に変更されました。

冷房装置は集中式で、インバータ制御により温度を細かく調整できます。初期型は角型の外観で手動操作式でしたが、後期型では外気導入機能が追加され、マイコンによる自動制御が可能になりました。

内装

客室内はベージュ系で統一され、「ラージサラサ模様」と呼ばれる柄入りの化粧板が使用されています。床材はベージュとオリーブグリーンの2色です。座席表地は、更新工事の際に紅紫色系に変更されました。座席は3扉車ではドア間が9人掛け、車端部が4人掛けです。天井には冷房ダクトと補助送風機が設置されています。吊り革は白色で、優先席はオレンジ色です。

4次車からは、座席端のスタンションポールが曲線的な形状に変更され、5次車からは車椅子スペースが設置されました。6次車からは、連結面の貫通路が拡大され、見通しが改善されました。

客用ドア上部にはLED式の車内案内表示器が設置され、次駅や乗り換え案内が表示されます。VVVFインバータ制御車では、東武線内でも自動放送と連動して案内表示が行われました。

乗務員室

乗務員室は、薄緑色と紺色を基調としたデスクタイプです。乗務員の居住性向上のため、室内スペースが広めに確保されています。運転台には、縦軸回転式のマスコンハンドルと電気指令式のブレーキ設定器が設置されています。計器盤右側には、車両制御情報管理装置（TIS）のモニターが設置されています。

機器類

初期の車両は、01系で実績のある高周波分巻チョッパ制御を採用しています。後期型では、IGBT素子を使用したVVVFインバータ制御に変更されました。ブレーキ装置は、回生ブレーキ併用の全電気指令式です。補助電源装置として、DC-DCコンバータが搭載されています。

全編成が東武伊勢崎線・日光線、東急東横線への乗り入れに対応していました。保安装置として、東急型ATSと東武型ATSが搭載されました。

5扉車

朝ラッシュ時の乗降時間短縮のため、一部編成の両端2両が5扉車として製造されました。5扉車は、3扉車に比べて座席定員は減少しましたが、立席定員が増加しました。5扉のうち2扉を締め切ることも可能で、その際には「このドアは開きません」という表示が点灯しました。

その他

2000年には、中目黒駅構内で列車脱線事故が発生し、一部車両が廃車となりました。2016年から廃車が始まり、2020年2月28日をもって全車両が引退しました。引退後、一部の車両は熊本電気鉄道、長野電鉄、北陸鉄道、上毛電気鉄道に譲渡され、第二の人生を歩んでいます。

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