嘉治隆一

嘉治隆一について

嘉治隆一（かじ りゅういち）は、1896年8月3日に兵庫県で生まれ、1978年5月19日に逝去した、日本の政治評論家です。彼は、著名な詩人・翻訳家である上田敏の娘婿としても知られています。

生涯

嘉治隆一は、東京帝国大学（現在の東京大学）法学部を卒業後、南満州鉄道東亜経済調査局に勤務しました。その後、東京朝日新聞社に入社し、1945年には論説主幹、1947年には出版局長を歴任しました。また、1945年9月から1946年4月にかけては、朝日新聞のコラム「天声人語」を担当しました。

朝日新聞社を退社後、嘉治は獨協大学で講師を務め、文部省大学設置審議会委員や東京市政調査会評議員など、教育・行政分野でも活躍しました。

文化人との交流も深く、同人組織「心（生成会）」の委員を務め、柳田國男をはじめとする多くの文化人と親交を深めました。また、中江兆民、田口卯吉、陸奥宗光といった明治期の思想家・政治家の研究や著作解説にも力を注ぎました。

作家の三島由紀夫とも親しい間柄でした。三島由紀夫の父である平岡梓が嘉治の旧友であったことが縁で、交流が始まりました。1951年（昭和26年）に三島が敢行した世界一周旅行の際には、嘉治が世話役を務めたことも知られています。

家族

嘉治家は、学術・文化に貢献した人物を多く輩出しています。弟の嘉治真三は東京大学社会科学研究所の教授を務め、その妻である淑子は田口文太の娘で、田口卯吉の孫にあたります。妻の瑠璃子は上田敏の娘です。

長男の嘉治元郎は東京大学教授を務めた経済学者であり、その妻の佐代は弁護士の伊藤鉄之助の娘です。娘の小堀玲子は、森鴎外の孫である小堀鴎一郎の妻で、聖心女子大学の名誉教授です。孫には、嘉治美佐子、嘉治佐保子（慶應義塾大学経済学部教授）がいます。

著書

嘉治隆一は、多数の著書を執筆しました。以下は、その一部です。

『東方問題論』（1939年）
『東邦研究』（1940年）
『建国より現代までソ連の経済』（1941年）
『南窓記』（1942年）
『歴史を創る人々』（1948年）
『五月の旅』（1953年）
『明治の社会問題』（1955年）
『中江兆民』（1956年）
『緒方竹虎』（1962年）
『人物万華鏡』（1967年）
『沖縄・台湾日記』（1968年）
『人と心と旅 人物万華鏡 後篇』（1973年）
『明治以後の五大記者 兆民・鼎軒・雪嶺・如是閑・竹虎』（1973年）

共著・編著

『マルクスとエンゲルス』（1925年、後藤信夫共著）
『近代ロシア社会史研究』（1925年、編著）
『沖縄あれから二十年』（1966年、編）

翻訳

ベルンシュタイン『修正派社會主義論』（1920年）
マルクス、エンゲルス『独仏年誌鈔』（1927年）


嘉治隆一は、政治評論家としてだけでなく、教育者、研究者、文化人としての幅広い活動を通じて、日本の社会と文化に大きく貢献しました。

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