嘉治元郎

嘉治元郎（かじもとお）

嘉治元郎は、1925年 8月13日に東京で生まれ、2011年7月23日に心筋梗塞のため85歳で亡くなった日本の経済学者です。東京大学名誉教授であり、経済学の研究と教育に尽力しました。

生い立ちと教育

嘉治元郎は、元朝日新聞社論説主幹の嘉治隆一の長男として生まれました。幼少期から教育熱心な家庭環境で育ち、1938年に東京高等師範学校附属小学校（現・筑波大学附属小学校）を卒業。その後、1943年に東京高等師範学校附属中学校（現・筑波大学附属中学校・高等学校）を卒業しました。附属中学校の同期には、石川六郎（鹿島建設名誉会長）、山本卓眞（富士通名誉会長）、森亘（元東京大学総長）、芥川也寸志（芥川龍之介の三男）など、各界で活躍する人物がいました。

1947年には第一高等学校を卒業し、1950年に東京大学経済学部を卒業。その後、同大学院の特別研究奨学生として木村健康に師事し、経済学の研究を深めました。

研究・教育活動

1952年、東京大学教養学部の助手となり、教育者としてのキャリアをスタートさせました。1953年から1954年にかけては、フルブライト奨学生としてハーバード大学大学院に留学し、アメリカの経済学を学びました。帰国後、1955年に東京大学専任講師、1958年に助教授に昇進。1960年から1961年には、再びフルブライト研究員としてスタンフォード大学に留学し、研究活動に専念しました。

1968年には東京大学教授に就任。同年から1969年にかけてイェール大学にも留学し、国際的な視野を広げました。1974年から1975年まで東京大学評議員、1978年から1979年まで東京大学教養学部長を務め、大学運営にも貢献しました。

1986年に東京大学を定年退官し、名誉教授の称号を受けました。その後、放送大学教授に就任し、1989年には同大学副学長も務めました。放送大学では、経済学に関する科目を担当し、多くの学生に経済学の知識を伝えました。

学会・社会活動

嘉治元郎は、学会活動や社会活動にも積極的に参加しました。1984年から1986年までアメリカ学会会長を務めました。また、財団法人放送大学教育振興会理事、財団法人国際文化会館理事長、財団法人グルー基金理事長、財団法人アメリカ研究振興会常務理事、財団法人政策科学研究所理事、財団法人渋沢栄一記念財団理事、財団法人日本ユニセフ協会評議員、財団法人ラボ国際交流センター評議員など、多くの団体の要職を歴任し、社会に貢献しました。

家族

嘉治元郎の父は、元朝日新聞社論説主幹の嘉治隆一、叔父は元東京大学社会科学研究所教授の嘉治真三（経済地理学）。妹は英文学者・聖心女子大学名誉教授の小堀玲子で、その夫は森鴎外の孫の小堀鴎一郎です。妻の嘉治佐代（1925年生）は東大経済学部卒で元郎との共訳書も多数あります。娘の嘉治美佐子は外交官、その妹の嘉治佐保子（1960年生）は慶応義塾大学経済学部教授です。

著書と翻訳

嘉治元郎は、経済学に関する多数の著書を執筆しました。

単著
『現代のアメリカ経済』（中公新書、1968年）
『経済学概論現代経済学の理解のために』（旺文社、1981年）
『現代の経済と経済分析』（放送大学教育振興会、1985年）
『経済発展論』（放送大学教育振興会、1987年）
『現代の経済学』（放送大学教育振興会、1989年）
『国際経済関係』（東京大学出版会、1990年）
『経済学入門』（放送大学教育振興会、1990年）
『国際経済学』（放送大学教育振興会、1990年）

共編著
『講座現代の経済政策第3巻成長過程の経済政策』（中央経済社、1965年）
『現代の経済と技術第5 新製品開発競争』（講談社、1966年）
『経済成長と資源配分』（岩波書店、1967年）
『アメリカ研究入門』（東京大学出版会、1969年）
『教育と経済』（第一法規出版、1970年）
『現代の世界地域研究講座第1 北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド』（ダイヤモンド社、1970年）
『現代経済学の展開』（勁草書房、1971年）
『アメリカ研究邦語文献目録歴史・政治・経済』（東京大学出版会、1973年）
『現代の国際金融』（春秋社、1974年）
『アメリカ学入門』（南雲堂、1975年）
『アメリカの経済輝きと翳り』（弘文堂、1992年）
『現代の経済学』（放送大学教育振興会、1996年）

翻訳
『イギリス労働運動史第3』（岩波書店、1957年）
『進化する経済体制政治経済学は何を提示できるのか』（ダイヤモンド社、1975年）
『教育の経済学』（春秋社、1976年）
『マクロ経済学理論と政策』（マグロウヒル好学社、1976年）
『ハイエク全集第3巻個人主義と経済秩序』（春秋社、1990年）

参考

『嘉治元郎先生に聞く』（東京大学教養学部附属アメリカ研究資料センター、1995年）

嘉治元郎は、日本の経済学の発展に大きく貢献した学者の一人であり、その研究と教育活動は後世に大きな影響を与えています。

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