嘉瀬川ダム

嘉瀬川ダム

嘉瀬川ダム（かせがわダム）は、佐賀県佐賀市に位置し、一級河川・嘉瀬川の上流に建設された特定多目的ダムです。国土交通省九州地方整備局が管理しており、その高さはおよそ97メートルの重力式コンクリートダムです。このダムは、洪水調節、農業用水と工業用水の供給、さらには水力発電を目的としています。ダムにより形成された人造湖は「富士しゃくなげ湖」と呼ばれ、佐賀県最大の規模を誇ります。また、2017年には土木学会デザイン賞の優秀賞を受賞しました。

沿革

嘉瀬川は古くから灌漑用水として利用されていましたが、台風による水害が頻発し、根本的な対策が必要とされていました。戦後の1991年までに20回以上の水害が発生し、特に1949年のジュディス台風では大きな被害を受けました。1965年に嘉瀬川が一級水系に指定され、堤防整備が進められましたが、問題は解決されませんでした。

また、嘉瀬川流域は有名な穀倉地帯であり、農業用水の確保が急務となっていました。1956年に北山ダムが建設されましたが、それでも水供給は十分ではありませんでした。したがって新たな多目的ダムの建設が求められ、1973年に嘉瀬川ダムの建設計画が発表されました。

補償

ダム建設に伴い、富士町にある160戸の住居が水没対象となりました。住民たちは「ダム建設に反対」とする活動を展開し、補償交渉は長期にわたりました。最終的に、代替地での集団移転補償が提案され、1995年に交渉が妥結しました。これには22年という長い時間を要し、住民の精神的な疲弊も大きかったといいます。このダム建設に関連するエピソードには、映画『男はつらいよ』のロケ地訪問があり、住民の一人が俳優に手紙を送ったことで実現したと言われています。

2001年には代替住宅が完成し、国道323号の整備も進みました。温泉地である古湯温泉もダム周辺の環境整備の一環として注目されていますが、地域住民の流出が続いており、その対策が求められています。

ダムの目的と機能

嘉瀬川ダムは、100年に1度の洪水に対処するための洪水調節機能を持つほか、正常な流量の維持と灌漑用水の供給、上水道の整備、工業用水の供給を目的としています。また、水力発電を通じて、環境にも配慮した新しいエネルギー源の開発として期待されています。しかし、供給予定の工業用水の一部が返上されるなど、需要の変動もあり、その適応が求められています。

環境保全対策

ダム作成においては自然環境への影響が懸念されるため、環境保全への取り組みが強化されています。環境アセスメント法に基づき、さまざまな生態系や文化的価値の保護が行われています。植生の復元や水没地の樹木の移植、さらには遺跡の発掘調査も進められています。完成後にはこのダムが地域を活性化することが期待されています。

事件

さらに、嘉瀬川ダムを巡っては過去に贈収賄事件が発生し、ダム工事に関与する職員が逮捕される事件も起きました。これにより、公の信頼性や透明性を担保する必要性が再認識されました。

富士しゃくなげ湖

富士しゃくなげ湖は、嘉瀬川ダムによって生まれた佐賀県最大の人造湖であり、観光地としても知られています。多くの観光客が訪れ、ボート競技の練習施設としても利用されています。近年のイベントでは、ボート競技が行われるなど地域振興の一端を担っています。

このように、嘉瀬川ダムは過去の水害からの教訓を元に計画され、多様な機能を持ちながら地域住民の声に耳を傾け、環境保全を重視したダム事業として進められています。

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