四賀村 (長野県東筑摩郡)

四賀村：消えた村の記憶と痕跡

2005年、長野県の中部に位置していた四賀村は、松本市に編入され、その歴史に幕を閉じました。かつて存在したこの村は、豊かな自然と歴史に彩られた場所でした。本稿では、四賀村の地理、歴史、そして人々の生活を彩った様々な要素を紐解きながら、その魅力に迫ります。

豊かな自然と歴史の調和

四賀村は、松本市、豊科町、明科町、本城村、丸子町、青木村といった複数の自治体と隣接していました。周囲は山々に囲まれた自然豊かな環境で、北アルプスの雄大な景色を望むことができました。村内には、虚空蔵山（会田富士）や御鷹山といった特徴的な山々がそびえ立ち、四季折々の美しい風景を織りなしていました。

四賀村の歩み：合併と消滅

四賀村は、1955年（昭和30年）4月に、錦部村、中川村、五常村、会田村の4つの村が合併して誕生しました。その後、1955年9月には、一部の地域が豊科町に編入されるなど、幾多の変遷を経てきました。そして、2005年（平成17年）4月1日、ついに松本市に編入され、四賀村は行政上の地図から消滅しました。最後の村長は中島学氏で、1991年4月30日に就任していました。

教育と生活：村のインフラ

四賀村には、会田小学校、中川小学校、五常小学校、錦部小学校の4つの小学校と、会田中学校がありました。これらの学校は後に統合され、現在は四賀小学校となっています。

交通面では、村内には鉄道は通っておらず、最寄りの駅は篠ノ井線の明科駅でした。バス路線としては、松本電鉄バスの四賀線、会田線、高速バスであるみすずハイウェイバスが運行され、村営バス（現・松本市営バス）が地域住民の足として活躍していました。主要道路は国道143号、長野県道302号、長野県道303号などでした。長野自動車道も村内を通っていましたが、インターチェンジは設置されていませんでした。

村内には、会田郵便局、錦部郵便局、四賀東簡易郵便局の郵便局が存在していました。五常村域には郵便局は設置されていませんでした。

四賀村の名所旧跡：歴史と文化の遺産

四賀村には、歴史と文化を伝える多くの名所旧跡が残されています。北アルプスの眺望は、多くの人々を魅了しました。また、赤怒田福寿草公園では、春の訪れを告げるフクジュソウの群生地が見られました。その他、洞光寺、保福寺、保福寺峠のコブシ、御鷹山の紅葉など、自然と歴史が調和した景観が広がっていました。

特に注目すべきは、岩井堂観音山周辺石造物群です。県内でも珍しい11体の磨崖仏があり、その規模と歴史的価値は高く評価されています。また、穴沢のクジラ化石は、県天然記念物に指定されており、四賀化石館で展示されていました。この化石は、日本で唯一とされるシガマッコウクジラを含んでおり、貴重な地質学的資料となっています。

松本市編入後：変化と課題

松本市に編入後、四賀村の住所表記は「四賀」が省略され、旧大字以下の地名がそのまま使われています。しかし、松本市中心部と四賀地区を結ぶ直結道路の建設は、合併条件として合意されたものの、いまだ実現していません。これは、合併後の課題の一つとして残されています。

四賀村は、その歴史と自然に恵まれた場所でした。村の消滅は、時代の流れによるものではありますが、その記憶と痕跡は、現在も松本市の歴史の一部として残されています。 この地を訪れることで、かつて存在した四賀村の面影を感じることができるでしょう。

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