四逆散

四逆散（しぎゃくさん）

四逆散は、漢方方剤の一つで、その出典は中国の古典医学書「傷寒論」に遡ります。江戸時代、日本の名医と謳われた和田東郭が、この処方が心身症などの疾患に特に有効であることを見出し、現代に至るまで広く用いられる漢方薬となりました。

名前が類似しているため混同されやすい四逆湯とは、全く異なる漢方薬です。注意が必要です。

概要

和田東郭は四逆散について、「希代の霊方」と評し、その効果を高く評価していました。四逆散は、神経の高ぶりや不安を抑制し、胃腸の不調を改善する効果があります。芍薬と柴胡という二つの生薬の組み合わせが特徴で、ストレスや緊張による痙攣を鎮める効果や、枳実によって停滞した気の流れを改善する効果が期待できます。

四逆散は、柴胡、芍薬、枳実、甘草の4つの生薬から構成されています。これらの生薬の組み合わせにより、気滞による熱感を鎮め、「肝」の機能を整える（補血・柔肝）効果を発揮します。

適応症

四逆散は、体力中等度以上で、胸腹部に重苦しさがあり、時に不安や不眠を伴う心身症状に適応します。具体的には、以下のような症状・疾患に用いられます。

ストレスによる心身症状
ストレス性神経胃炎
胃酸過多
過敏性腸症候群
胃潰瘍
胆嚢炎
胆石症
気管支炎
神経症
不眠症
てんかん
狭心症

保険適用エキス剤としては、胆嚢炎、胆石症、胃炎、胃酸過多、胃潰瘍、気管支炎に対して効能・効果が認められています。

組成・処方量

四逆散の構成生薬と一般的な処方量は以下の通りです。

柴胡（さいこ）：5.0g
枳実（きじつ）：2.0g
芍薬（しゃくやく）：4.0g
甘草（かんぞう）：1.5g

方解

四逆散は、比較的体力があり、みぞおちから両脇にかけて圧迫感があり、手足が冷え、気が重く、腹痛がある場合に適しています。胃炎、腹痛、胆石、神経症、気管支炎などに応用されます。大柴胡湯と小柴胡湯の中間の状態に用いられることがあります。

症

四逆散が有効な状態を示す症状としては、以下のようなものが挙げられます。

みぞおちの圧迫感
四肢の冷え
腹痛
動悸
抑うつ的な神経症状
咳嗽

腹部の所見としては、季肋部やみぞおちに抵抗圧痛が見られ、上腹部の腹直筋に顕著な引き攣れが見られることがあります。

その他

四逆散は、大柴胡湯と小柴胡湯の中間的な状態に用いられることがあります。便秘や嘔吐などの症状がなく、急迫性のみぞおちの痛みが強い場合に特に有効です。

脚注

関連項目

大柴胡湯
小柴胡湯
* 四逆湯（名前が似ていますが、四逆散とは全く異なる漢方薬です。）

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