回光通信機

回光通信機とは

回光通信機は、光の明滅を利用して情報を伝達する軍事用通信機器です。視覚的な通信手段として、主に遠距離間での情報伝達に用いられました。回光通信機には、大きく分けて太陽光を光源とする「ヘリオグラフ」と、電球などの人工光源を用いる「信号灯」の二種類が存在します。

ヘリオグラフ

ヘリオグラフは、太陽光を反射させて通信を行う方式です。平面鏡を送信機として使用し、太陽光を対向する通信所に向けて反射させます。通信手は、隔光板を用いて太陽光を断続的に遮断することで、モールス符号などの信号を送信します。ヘリオグラフは、昼間の晴天時に効果を発揮しますが、夜間や雨天時には使用することができません。そのため、夜間や悪天候時にも使用可能な改良型として、灯油ランプやアセチレンランプを光源とするタイプも開発されました。

信号灯

信号灯は、電球などの人工光源を利用した通信機です。光源と光を遮断するブラインドで構成されており、ブラインドの開閉操作により光を明滅させて符号を送信します。ブラインドを使用せず、光源を直接明滅させる方式も存在します。信号灯は、現在でも船舶などで広く利用されています。

日本軍における回光通信機

日本軍では、1880年（明治13年）に旧帝国陸軍で軍用電信隊が創設された際、ヘリオグラフ式の回光通信機が初めて採用されました。しかし、夜間や雨天時の運用が困難であったため、1887年（明治20年）に軍用電信隊が解散されるとともに廃止されました。

1889年（明治22年）には、フランスの工兵将校マンゼンの考案によるガラス式および鏡式の通信機が導入されました。この通信機は、太陽光に加えて灯油ランプも光源として使用できたため、夜間や雨天時にも利用可能でしたが、不便な点が多く、1902年（明治35年）頃までに廃止されました。

日露戦争において回光通信機の重要性が認識されたため、1907年（明治40年）から国産品の製造や外国製機の購入に関する研究が進められました。そして、1913年（大正2年）から1922年（大正11年）にかけて、10cm、20cm、30cmの回光通信機が採用されました。これらの通信機は、太陽光とアセチレンランプを光源として使用しました。その後、電球を光源とするタイプも開発されました。

参考文献

日本陸軍兵器局器材課 「携帯回光通信機仮取扱法の件」 アジア歴史資料センター Ref.C01001196700 「大日記甲輯昭和05年」（防衛省防衛研究所）

関連項目

軍事通信
アルバート・マイアー
指向指示灯 - 航空機と無線交信が出来ない場合に管制官が使う投光器。ライトガンとも。
* ビーコン

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