回腸炎

回腸炎とは

回腸炎は、小腸の末端部分である回腸に炎症が起こる病気です。回腸は、小腸の中でも特に重要な役割を担っており、栄養素の吸収や免疫機能に関わっています。回腸に炎症が起こると、これらの機能が阻害され、さまざまな症状が現れます。

原因

回腸炎の原因は多岐にわたります。

感染症: 結核菌などの細菌やウイルス、寄生虫による感染が原因となることがあります。
炎症性腸疾患: クローン病などの炎症性腸疾患は、回腸に炎症を引き起こす代表的な疾患です。
自己免疫疾患: サルコイドーシスやアミロイドーシスなどの自己免疫疾患も、回腸炎の原因となることがあります。
その他: 虚血、新生物、血清反応陰性関節炎、血管炎症候群、薬物関連疾患、好酸球性腸炎なども、回腸炎と関連している可能性があります。

症状

回腸炎の症状は、原因や炎症の程度によって異なりますが、一般的には以下の症状が見られます。

腹痛: 特に右下腹部に痛みが生じることが多いです。
下痢: 急性の場合は水様性の下痢、慢性の場合は粘血便が見られることがあります。
発熱: 感染症が原因の場合に見られることがあります。
食欲不振: 炎症によって消化吸収機能が低下するために起こります。
体重減少: 慢性的な炎症が続くと、体重が減少することがあります。
出血: 血管炎症候群などが原因の場合に見られることがあります。
腸閉塞症状: 炎症によって腸管が狭窄すると、腸閉塞症状が現れることがあります。
腸管外症状: 血清反応陰性関節炎などが原因の場合、関節炎などの腸管外症状が見られることがあります。

症状が軽度な場合は、自然に治癒することもありますが、重症化すると入院治療が必要となることもあります。

診断

回腸炎の診断には、以下の検査が行われます。

血液検査: 炎症の程度や貧血の有無などを調べます。
便検査: 細菌やウイルス、寄生虫の有無などを調べます。
内視鏡検査: 大腸内視鏡や小腸内視鏡を用いて、回腸の炎症の状態を直接観察します。
画像検査: CT検査やMRI検査で、回腸の炎症の範囲や程度を評価します。

治療

回腸炎の治療は、原因によって異なります。

感染症が原因の場合: 抗菌薬や抗ウイルス薬を投与します。
炎症性腸疾患が原因の場合: ステロイドや免疫抑制剤などを用いて、炎症を抑えます。
自己免疫疾患が原因の場合: 自己免疫を抑制する薬を投与します。

症状を緩和するために、対症療法も行われます。例えば、下痢に対しては止瀉薬、腹痛に対しては鎮痛薬を使用します。重症の場合は、絶食にして点滴で栄養を補給することもあります。

予後

回腸炎の予後は、原因や炎症の程度によって異なります。感染症が原因の場合は、適切な治療を行えば比較的短期間で治癒することが多いです。しかし、炎症性腸疾患や自己免疫疾患が原因の場合は、慢性化することがあります。慢性化した場合は、症状をコントロールしながら、長期的な治療が必要となります。

参考文献

Geboes, Karel; Jouret-Mourin, Anne (2018). “Ileitis”. Colitis. Cham: Springer International Publishing

関連項目

胃腸炎
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