胃腸炎

胃腸炎（gastroenteritis）

胃腸炎は、消化管、特に胃と小腸の炎症を特徴とする一般的な疾患です。感染性下痢としても知られ、発熱、下痢、嘔吐、腹痛、腹部痙攣などの症状を伴います。原因は様々で、ウイルス、細菌、寄生虫などが考えられます。

症状と徴候

主な症状は下痢と嘔吐ですが、腹部痙攣も伴うことがあります。症状は通常、感染から12〜72時間で現れます。

ウイルス性胃腸炎: 症状は通常1週間以内に軽快し、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛を伴うことがあります。血便はまれです。
細菌性胃腸炎: 重度の腹痛を伴い、数週間続くことがあります。血便が見られることもあります。
ロタウイルス感染: 小児の場合、通常3〜8日以内に全快しますが、貧困国では重症化しやすく、下痢が長引くことがあります。脱水症状に注意が必要です。

合併症として、カンピロバクター感染後の反応性関節炎やギラン・バレー症候群、腸管出血性大腸菌感染後の溶血性尿毒症症候群 (HUS) などがあります。

原因

胃腸炎の主な原因は、ウイルスと細菌です。小児は免疫が未発達なため、感染リスクが高くなります。

ウイルス性: ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、アデノ[[ウイルス]]などが主な原因です。ロタウイルスは小児の胃腸炎で最も一般的で、ノロウイルスは成人の集団発生の主な原因です。
細菌性: カンピロバクター・ジェジュニ、大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌などが主な原因です。汚染された食品を摂取することで感染します。高齢者では、クロストリディオイデス・ディフィシルも重要な原因となります。
寄生虫性: ランブル鞭毛虫、赤痢アメーバ、クリプトスポリジウムなどが原因となります。発展途上国で多く見られます。

感染経路

汚染された水や食品の摂取、感染者との接触、身の回り品の共用などが主な感染経路です。不衛生な環境や、哺乳瓶の不適切な管理も感染リスクを高めます。

非感染性の原因

医薬品 (NSAIDsなど)、ラクトース (乳糖不耐症の場合)、グルテン (セリアック病患者の場合)など、非感染性の原因も存在します。クローン病も胃腸炎を引き起こす可能性があります。また、シガテラ中毒、ヒスタミン中毒、テトロドトキシン中毒、ボツリヌス中毒などの毒素も原因となります。

診断

症状に基づいて臨床診断されます。原因特定の検査は通常不要ですが、血便がある場合、食中毒が疑われる場合、発展途上国への渡航歴がある場合には検便が必要となることがあります。脱水症状の評価も重要です。

治療

治療の基本は水分補給です。軽度から中等度の脱水には経口補水液が効果的ですが、重症の場合は点滴が必要となることがあります。

水分補給: 経口補水液が推奨されます。ソフトドリンクやフルーツジュースは下痢を悪化させる可能性があるため避けるべきです。
食事: 母乳栄養児は通常通り授乳を継続し、人工乳栄養児は経口補水液での水分補給後、速やかに人工乳を再開します。下痢が続く場合でも、単糖類を多く含む食品を避け、通常の食事を継続することが推奨されます。BRAT食は推奨されません。
制吐薬: 小児の嘔吐に対して、オンダンセトロンが有効な場合があります。
抗生物質: 通常は不要ですが、重症の場合や細菌性の原因が特定された場合に限り推奨されることがあります。

予防

生活習慣: 清潔な水を確保し、手洗いを徹底するなど、衛生的な生活習慣を心がけることが重要です。特に、調理前、食事前、トイレ後には必ず手を洗いましょう。
ワクチン: ロタウイルスワクチンは、小児の重症胃腸炎を減少させる効果があります。経口コレラワクチンも有効です。

疫学

胃腸炎は世界中で年間30億〜50億件発生しており、140万人が死亡しています。特に小児や発展途上国での発生が多くなっています。

研究

赤痢菌や毒素原性大腸菌に対するワクチンなど、胃腸炎に対するワクチンが多数開発中です。

動物の胃腸炎

ネコやイヌも胃腸炎を発症します。原因となる病原体は、カンピロバクター、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、サルモネラ菌などです。また、有毒植物も原因となることがあります。

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