国司庁宣

国司庁宣について

国司庁宣（こくしちょうせん）は、日本の歴史において、受領国司や知行国主がその管轄下にある留守所や郡司への命令を伝えるために用いられた文書です。略称として「庁宣」とも呼ばれ、文書の形式や内容には特定の決まりがあります。この文書は、政治的および行政的な役割を果たし、時代とともにその役割が変化していきました。

文書の構成と形式

国司庁宣は主に以下の構成要素から成り立っています。文書の冒頭には「庁宣」という二文字が記され、その下に宛先が明記されます。次に事書が書かれ、それに続いて本文が記述されます。最後には「以宣」という表現で締められることが一般的です。文書の内容が整った後、位署が付けられるのですが、これは受領によって行われ、書止の次の行に日付が記された後に官職名や氏名が記載され、最後に花押が押印されます。

興味深い点は、発給者と受取人が同じ国の役職に属しているため、官職名には国名が含まれないことです。また、国司庁宣の初期の文書には国印が押されていましたが、12世紀に入り、知行国主が国務に対する関与を高めると、受領の奥上署判と共に知行国主の袖判も併せて押されるようになりました。

国司庁宣の歴史的背景

国司庁宣の起源は、新司宣（しんじせん）にまでさかのぼることができます。新任の国司は、正式に就任するまでの儀式を終えていないため、通常は国符などの命令文書を発行することが許されていませんでした。しかし、就任儀礼に関連する指示や予期せぬ事態が生じた際には、急遽非公式の命令文書を発行する必要が生まれていました。これが新司宣の起源です。

新司宣は特定の範囲や目的に限定されたものでしたが、次第に国符に該当しない事例にも非公式な命令文書として用いられることが増え、これが広く用いられるようになった結果、国司庁宣が成立しました。特に11世紀以降、受領の在京化や知行国の設立に伴い、国司が地方に赴かず、現地の留守所や在庁官人が実際の政務を担当するようになると、命令は国司庁宣を通じて伝えられ、その結果、現地側は下文を作成して命令を実行するようになりました。

このようにして、国司庁宣には様々な命令が記載され、補任や所領の寄進、そして権利の付与など、国務全般にわたる内容が表れました。

国司庁宣の役割の変化

しかし、時が経つにつれ、知行国主の影響力が増大したことで、彼らが国司庁宣を発行する形式は変わり、受領に対する命令書である国宣が現地に送られる形が一般化し、国司庁宣の重要性は低下していきました。最終的には守護領国制が確立され、それに伴う国衙機構の解体により、国司庁宣は国宣と共にその機能を失うこととなりました。これにより、国司庁宣の歴史的な役割も完了することになります。

結論

国司庁宣は、日本中世の政治行政における重要な文書であり、その成り立ちや内容は、時代背景や政治的な変革を映し出しています。この文書の変遷を辿ることで、中世日本の行政機構や権力構造を理解する手助けとなるでしょう。

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