補任

補任（ぶにん）について

補任とは、官人に対して官職や位階を与えることを指します。この行為は、日本の歴史や行政制度において重要な役割を果たしてきました。補任の儀式は「除目」とも呼ばれ、特定の手続きに基づいて行われます。

補任の分類と歴史的な背景

補任は、官職に対する任命を含む広範な概念です。本来、官に任命することを「任」、職に任命することを「補」、位階や勲等を授与することを「叙」と区別していました。しかし、次第にこれらは相互に関連付けられ、補任という言葉が広まるようになりました。補任には、天皇による「勅任」、太政官の上奏を必要とする「奏任」、太政官の直接任命による「判任」、式部省や兵部省の選考を経た「判補」がありました。明治維新以降の変遷により、判補が廃止されたものの、他の形式は内閣に受け継がれ、1946年まで存続しました。

兼任・転任・還任の概念

ある個人が複数の官職に補任される場合は「兼任」または「兼帯」と呼ばれ、他の官職に移ることは「転任」や「遷任」と表現されます。さらに、以前に補任されていた官職に戻ることは「還任」または「還補」と称されることもあります。

補任の儀式と文化的背景

補任は単なる任命行為にとどまらず、任命者と被任命者の関係においても重要な意味を持ちます。被任命者は任命者に対して感謝の意を示すため、成功や金銭を贈ることが一般的な礼儀とされていました。このような慣習は、近代以前の日本において、賄賂とは異なる重要な収入源と見なされていました。また、南北朝時代には、出仕を促すために官職の補任を活用した事例もあり、任命が儀式的な意味を持っていたことが分かります。特に、大臣や近衛大将のような高位の官職につく際には、大規模な宴会を伴うことが通例でした。

補任の記録と制度

補任に関する記録は、律令制の下で厳格に管理されていました。中務省や式部省などの各官司が毎年2回、補任帳を作成し、その内容は次年度の除目の参考とされました。補任帳には、補任者の官位、氏名、任官の日時が記録され、死去や異動に伴う訂正が加えられました。また、特定の記録は年表形式でまとめられ、さまざまな公家や武家、寺院に関連した補任の記録が残っています。

陸海軍と自衛隊における補任

第二次世界大戦前、陸軍省や海軍省では人事局に補任課を設け、軍人の人事管理に関連した業務を行っていました。今日の防衛省でも、内部部局に補任に関する課が設けられ、自衛官の人事制度の運営を担当しています。これにより、補任の制度は現代においても生き続けています。

まとめ

補任は日本の官僚制度の根幹をなす重要なプロセスであり、その背景には歴史的、文化的な要素が多数存在しています。任命者と被任命者の関係、補任に関連する記録制度など、多角的な視点から見直すことが求められています。

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