国家公務員倫理法

国家公務員倫理法について

国家公務員倫理法は、国民全体の奉仕者である国家公務員が、その職務を公正に遂行するための倫理を確立し、国民の信頼を確保することを目的とした法律です。平成11年（1999年）に制定され、平成12年（2000年）に施行されました。

概要

この法律は、国家公務員が職務を行うにあたり、国民からの疑惑や不信を招くような行為を防止するための措置を講じることを定めています。具体的には、国家公務員倫理規程の制定、贈与等の報告義務、国家公務員倫理審査会の設置などが盛り込まれています。

第5条では、国家公務員倫理規程の制定に関する政令委任が規定されています。倫理規程は、公務員が遵守すべき具体的な行動規範を定めるものであり、職務の公正さを保つための重要な要素です。

第10条に基づき、人事院には国家公務員倫理審査会が設置されています。倫理審査会は、倫理規程に関する意見の申出、懲戒基準の作成、研修の企画・調整、報告書の審査、違反の疑いがある場合の調査などを行います。会長と委員で組織され、中には両議院の同意を得て内閣が任命する委員もいます。

構成

国家公務員倫理法は、以下の章で構成されています。

第一章：総則
第二章：国家公務員倫理規程
第三章：贈与等の報告及び公開
第四章：国家公務員倫理審査会
第五章：倫理監督官
第六章：雑則

制定の背景

国家公務員倫理法は、1998年の大蔵省接待汚職事件を契機として制定されました。この事件では、高級官僚が接待を通じて不正な利益を得ていたことが明らかになり、国民の信頼を大きく損ないました。事件後、同様の事態を防ぐため、公務員の倫理に関する法整備が進められ、国家公務員倫理法が誕生しました。

高橋洋一元財務官僚は、当時の公務員の感覚として「接待で100万円を超えると収賄で逮捕されるが、それ以下なら許されるという感覚だった」と述べています。この認識を改め、社会通念とのずれをなくすために、国家公務員倫理法が制定されました。具体的には、5000円以上の利益供与があった場合、届け出ることが義務付けられています（国家公務員倫理法第6条）。

近年の動向

近年では、いわゆる「居酒屋タクシー」や「東北新社役職員による総務省幹部接待問題」、「NTT役職員による総務省幹部接待問題」など、公務員の倫理に関する問題が繰り返し発生しています。これらの問題は、贈収賄罪に問われる可能性だけでなく、国家公務員倫理規程に抵触する可能性も指摘されています。

関連法規

国家公務員法：倫理法の対象となる公務員の範囲などを定めています。
人事院規則：国家公務員法を実施するための細則を定めています。
* 地方公務員法：地方公務員の倫理に関する規定を設けています。

まとめ

国家公務員倫理法は、公務員の倫理を確立し、国民の信頼を確保するための重要な法律です。しかし、法律が存在するだけでは十分ではありません。公務員一人ひとりが倫理意識を高め、法律を遵守するよう努めることが重要です。

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