国家再編成プロセス

アルゼンチンの国家再編成プロセス：暗黒の時代

国家再編成プロセス（スペイン語: Proceso de Reorganización Nacional）は、1976年から1983年までアルゼンチンを支配した軍事政権が自らを正当化するために用いた名称です。この時代は「最後の軍事政権」または「最後の独裁政権」として知られ、アルゼンチン現代史における最も暗い時期の一つとされています。

クーデターと権力掌握

1976年、アルゼンチン軍はクーデター（1976 Argentine coup d'état）により権力を掌握しました。これは、前大統領フアン・ペロンの死後、支持者間の激しい党派対立と暴力が激化する中で起こりました。軍事政権は、政治的反対勢力や左翼ゲリラを弾圧する「汚い戦争」と呼ばれる作戦を展開しました。

汚い戦争の実態

「国家再編成プロセス」の名の下、軍事政権は国家の危機的状況を制御するという名目で、徹底的な弾圧を行いました。イデオロギー的な理由や証拠のない告発に基づいた逮捕、強制失踪が横行し、社会は恐怖に包まれました。軍は市民の家を襲撃し、略奪を働き、政府に批判的な人々を容赦なく弾圧しました。大学にはスパイが送り込まれ、左翼的な意見を持つ学生は姿を消しました。行方不明者捜索国家委員会（CONADEP）の公式調査によれば、犠牲者は8961人に上りますが、実際にはさらに多くの人々が犠牲になったと考えられています。

コンドル作戦と国際的な協力

アルゼンチンの秘密情報機関は、アウグスト・ピノチェト政権下のチリの情報機関と協力し、コンドル作戦と呼ばれる南米の左翼勢力撲滅作戦を支援しました。この作戦には、アメリカ合衆国も関与していたとされています。

プロパガンダと検閲

軍事政権は立法府を閉鎖し、厳しい検閲を実施して言論の自由を奪いました。1978年にアルゼンチンで開催されたFIFAワールドカップは、国民の愛国心を高めるためのプロパガンダとして利用されました。

経済政策の失敗

ビデラ政権は、ホセ・アルフレド・マルティネス＝デ＝オスを経済閣僚に任命し、新自由主義的な政策を推進しました。しかし、国営企業の民営化は進まず、軍事政権は公共事業や社会保障のために多額の対外債務を抱え込みました。高金利政策と過度なペソ高はインフレを抑制できず、アルゼンチンの産業と輸出に悪影響を与えました。軍事政権の経済政策は生活水準を低下させ、貧困層を増加させました。

フランスとアメリカの関与

フランスは、アルジェリア戦争の経験を持つ兵士からなる軍事顧問団をアルゼンチンに派遣し、軍事政権を支援しました。また、アメリカ合衆国のヘンリー・キッシンジャー国務長官は、軍事政権に対し、人権問題を矮小化するような発言を行いました。

体制の崩壊と民主化

腐敗、経済の悪化、そしてフォークランド紛争での敗北により、軍事政権への国民の不満が高まりました。1983年、ラウル・アルフォンシンが大統領に選出され、アルゼンチンは民主主義を取り戻しました。

その後：正義の追求と記憶

アルフォンシン大統領の命令により、「プロセス」の指導者たちは裁判にかけられましたが、1989年にカルロス・メネム大統領によって恩赦が与えられました。しかし、2005年に恩赦法は違憲とされ、軍事政権の将校たちの裁判が再開されました。2002年、アルゼンチン議会は3月24日を「真実と正義を記憶する日」と定め、独裁政権の犠牲者を追悼しています。

国家再編成プロセスは、アルゼンチン社会に深い傷跡を残しました。しかし、民主主義を取り戻し、過去の過ちを繰り返さないために、アルゼンチン国民は記憶と正義の追求を続けています。

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