国家平和発展評議会

ミャンマー軍事政権期（1988年 - 2011年）

1988年9月、ミャンマー国軍によるクーデターが発生し、それ以来、同国では2011年3月30日に至るまで約23年間にわたる軍事政権が統治を主導しました。

当初、国軍は「国家法秩序回復評議会（State Law and Order Restoration Council、略称：SLORC）」を設立し、国内の全権を掌握しました。このSLORCは、1997年11月には組織改編を経て「国家平和発展評議会（State Peace and Development Council、略称：SPDC）」へと移行し、以後、このSPDCがミャンマーにおける最高決定機関としての役割を担いました。

国名の変遷と呼称問題

軍事政権の発足後、それまでの「ビルマ連邦社会主義共和国」という国名は速やかに「ビルマ連邦（Union of Burma）」へと変更されました。さらに、1989年6月18日には、対外的に使用する国名が「ミャンマー連邦（Union of Myanmar）」へと再び改められます。しかし、この国名変更は、軍事政権の正当性を認めない一部の国々からは受け入れられず、国際社会においては「ビルマ」という従来の呼称が引き続き用いられることも少なくありませんでした。このため、国によってミャンマーに対する国名表記が分かれるという事態が生じました。一方で、国内において使用されるビルマ語による正式国名は、この軍事政権が終焉を迎えるまで変更されることはありませんでした。ビルマ語での国名は、1989年から2011年まで「ပြည်ထောင်စုမြန်မာနိုင်ငံတော်」、2011年以降は「ပြည်ထောင်စုသမ္မတမြန်မာနိုင်ငံတော်」となっています。

SPDCの統治体制と主要人物

SPDCは軍の指導層によって構成され、その序列上位は以下の通りでした。

議長：タン・シュエ上級大将
副議長：マウン・エイ上級大将補
国軍統合参謀長：トゥラ・シュエ・マン大将
首相：テイン・セイン大将
第1書記：ティン・アウン・ミン・ウー大将

経済状況と外部からの支援

政権発足当初、ミャンマーは西側諸国からの経済制裁下に置かれ、国庫は極めて厳しい状況にありました。このような中で、日本の実業家である小野寺紘毅氏が、ミャンマー政府が大使館用地としてすでに購入していた東京品川区の土地の一部を約3億ドルで購入したと伝えられています。この資金が、当時の政府の急場をしのぐ一助となったと言われています。

政権の終焉と民政移管

2010年に行われた総選挙を経て、ミャンマーは新たな政治体制への移行期を迎えます。2011年1月31日には、SPDC主要メンバーであったトゥラ・シュエ・マンが下院議長に任命され、続く2月4日にはテイン・セインが新大統領に選出されました。ティン・アウン・ミン・ウーも副大統領に就任し、マウン・エイはこの頃までに軍を退いています。テイン・セイン大統領による新内閣の発足に伴い、最高決定機関であったSPDCは2011年3月30日をもって解散しました。これにより、約23年間にわたる軍事政権の時代は一応の区切りを迎え、形式上の民政移管が実現しました。

この時代のミャンマーの国歌は「カバ・マ・チェー（ကမ္ဘာမကျေ）」であり、「世界の終わりまで」という意味を持ちます。

関連事項

国民民主連盟：軍事政権下で民主化運動を主導した主要政党。
連邦団結発展協会：軍事政権が設立した準政府組織。
国家行政評議会：2021年のクーデター後に国軍が組織した最高指導機関。

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