国府津町

国府津町（こうづまち）

国府津町は、かつて神奈川県足柄下郡に存在した町です。現在の小田原市の国府津、田島にあたる地域でした。ここでは、国府津町の前身である国府津村についても解説します。

地理

国府津町は、神奈川県の西部に位置し、現在の小田原市の東部にあたります。相模湾に面しており、森戸川や剣沢川などの河川が流れています。

歴史

町名は、この地に相模国府の港があったことに由来します。明治時代に入り、1887年（明治20年）に東海道本線国府津駅が開業すると、その様相は一変します。翌年には小田原、湯本への小田原馬車鉄道が開業し、国府津駅は東京から箱根方面への乗り換え駅として重要な役割を担うようになりました。

駅前は賑わいを見せ、割烹旅館や商店が軒を連ね、箱根の旅館の中には国府津駅前に案内所を設けるものもあったほどです。1889年（明治22年）に東海道本線が御殿場経由で全通すると、国府津駅には急勾配を越えるための増結機関車の機関庫が設置され、優等列車が増結作業のために停車し、交通の要衝として発展しました。

温暖な気候と海の恵みにより、国府津は湘南の避暑避寒地としても注目され、大隈重信や大鳥圭介、加藤泰秋といった華族や政財界の要人たちが別荘を構えました。徳川慶喜は大鳥圭介の別荘を、西園寺公望は加藤泰秋の別荘を訪れるなど、人々が行き交い交流する場所でもありました。

しかし、国府津町は自然災害にも見舞われています。1902年（明治35年）の小田原大海嘯、1923年（大正12年）の関東大震災では甚大な被害を受けました。さらに、1934年（昭和9年）に丹那トンネルが開通し、東海道本線が熱海駅経由に変わると、国府津駅での機関車の増結が不要となり、交通の要衝としての地位は徐々に低下していきました。

沿革

1889年（明治22年）4月1日：町村制施行により、国府津村が単独で村制を施行し、足柄下郡国府津村が発足。
1889年（明治22年）4月1日：田島村が単独で村制を施行し、足柄下郡田島村が成立。
1924年（大正13年）4月1日：町制を施行し、国府津町となる。
1948年（昭和23年）4月1日：田島村を編入。
1954年（昭和29年）12月1日：足柄下郡酒匂町、上府中村、下曽我村、片浦村と共に小田原市へ編入される。

行政

1932年（昭和7年）から4年間と、1940年（昭和15年）11月28日〜1946年（昭和21年）1月23日の2期にわたり、当時の東華軒社長であった飯沼相三郎が国府津町長を務めました。

教育

町立国府津小学校：1881年に設置された前川小学校国府津分校が前身。現:小田原市立国府津小学校

交通

道路
国道1号（旧東海道）
鉄道路線
国鉄東海道本線・御殿場線（1934年〜）：国府津駅
小田原電気鉄道（1920年まで）：国府津 - 国府津館前 - 江陽銀行 - 親木橋

現在の町名

住居表示実施地区
国府津一 - 五丁目（大字国府津、大字前川）
小八幡一 - 四丁目（大字国府津）
酒匂一 - 七丁目（大字国府津）
住居表示未実施地区
国府津、田島

参考文献

中野敬次郎『小田原近代百年史』形成社、1968年。
小田原市立図書館『小田原市史ダイジェスト版 おだわらの歴史』小田原市立図書館、2007年。
『東華軒創業100年記念誌 新生ハローズ 新たなる旅立ち』東華軒 記念誌編集刊行委員会、1989年。

関連項目

神奈川県の廃止市町村一覧
国府津

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