国木田虎雄

国木田 虎雄

国木田 虎雄（くにきだ とらお、1902年（明治35年）1月5日 - 1970年（昭和45年））は、大正から昭和期にかけて活動した日本の詩人です。近代日本の代表的な作家である国木田独歩と、その二人目の妻である治子の間に長男として生まれました。

生涯

東京の赤坂に生まれた虎雄は、少年期を過ごし、1915年（大正4年）に神奈川師範附属小学校を卒業しました。この時期の同級生には、後に俳優として活躍する江川宇礼雄や岡田時彦（高橋英一）、映画監督となる青柳信雄らが名を連ねていました。その後、京北中学校に進学するも、病気のため無念の中途退学を余儀なくされます。

文学への志を抱いた虎雄は、1922年（大正11年）に福士幸次郎によって創刊された詩誌『楽園』に参加。同誌に自身の詩を発表し、編集発行人であった金子光晴をはじめ、サトウハチロー、永瀬三吾、今井達夫といった同人たちと活発な交流を持ちました。こうした活動の中で、1923年（大正12年）には最初の詩集となる『鷗』を刊行。さらに翌1924年（大正13年）には、父・独歩の未刊随筆などをまとめた『独歩随筆集』の出版を手がけています。

私生活では、松竹蒲田撮影所でエキストラとして活動していた頃に知り合った香取幸枝（後に作家・団鬼六の実母となる人物）と結婚し、一時神奈川県の鵠沼で生活を営みました。しかし、この結婚生活は長く続かず離婚に至り、その後東京の大田区にある馬込文士村へと移り住みました。

馬込に移った後に、横浜出身の道子夫人と再婚します。この頃、国木田独歩の著作が円本ブームに乗って大きな収益を上げ、虎雄は莫大な印税を手にすることとなりました。この潤沢な資金を背景に、新妻の道子と共に都心のホテルで贅沢な暮らしを始め、趣味である競馬に多額の金を費やしていたといいます。こうした状況を案じたのか、あるいは単なる誘いか、詩人の金子光晴から上海行きを勧められます。そして1927年（昭和2年）、金子の案内で夫婦揃って上海に渡航し、長期にわたる滞在期間中、再び競馬に明け暮れる日々を送ったとされています。

第二次世界大戦終結後、虎雄は神奈川県の鎌倉に移り住みます。戦後の混乱期を経て、鎌倉文庫での勤務を経験した後、藤沢病院の精神科で看護長として約10年間にわたり勤務しました。文学とは異なる職に就きながら晩年を過ごし、1970年（昭和45年）、68歳でその生涯を閉じたのです。

家族

家族としては、道子夫人との間に長男の三田隆がおり、後に映画俳優として活動しました。また、モデルとして活躍する国木田彩良は三田隆の孫にあたり、虎雄にとっては曾孫にあたる存在です。

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