鵠沼

鵠沼（くげぬま）

概要

鵠沼は、神奈川県藤沢市の南部に位置する地域で、相模湾に面しています。北は旧東海道付近、東は境川、西は引地川に囲まれた地域で、人口は5万人を超える規模です。年間を通して多くの観光客が訪れる湘南海岸を有し、自然豊かな環境と歴史的な背景を併せ持つエリアです。

地理

• - 位置と範囲: 藤沢市南部の海岸中央に位置し、東は片瀬地区、西は辻堂地区、北は藤沢地区に隣接しています。
• - 伝統的な大字としての鵠沼: 平安時代末期には「鵠沼郷」と呼ばれていました。境川以西、引地川以東、南は海岸線、北は旧東海道が境界でした。明治時代には鵠沼村となり、1908年に藤沢大坂町・明治村と合併し、藤沢町の一部となりました。
• - 行政区分としての鵠沼: 藤沢市は市域を13地区に分けて行政を進めており、鵠沼地区もその一つです。
• - 都市計画上の地域区分: 藤沢市の都市マスタープランでは、鵠沼地区に南藤沢を含めています。
• - 統計処理上の鵠沼地区: 2005年の国勢調査では、人口52,318人、面積5.55km²、人口密度9,427人/km²となっていますが、この数値は鵠沼神明を除き、南藤沢と片瀬地区の一部を含んだものです。
• - 鵠沼市民センターの管轄範囲: 鵠沼神明北部を除き、南藤沢を含む地域を管轄しています。

地形・地質

• - 海岸砂丘列と砂丘間低湿地: 湘南砂丘地帯に位置し、平坦な地形ですが、砂丘列が見られます。砂丘の方向は、かつて季節風の影響とされていましたが、現在は縄文海進以降の海岸線変化によるものと考えられています。
• - 両河川の沖積低地: 境川と引地川が土砂を堆積して形成した沖積平野です。引地川は1930年代に河川改修が行われるまで自由蛇行を繰り返していました。境川沿いは公共施設や商業施設が立ち並び、引地川沿いは公園などがあります。

気候・植生

• - 海洋性気候が顕著で、気温の変化が小さく、年間を通して海陸風の影響を受けます。海岸部には砂防林があり、内陸には屋敷林が見られます。

歴史

古代から近世

• - 奈良時代: 高座郡土甘郷が置かれました。
• - 平安時代末期: 鎌倉景正によって開拓され、伊勢神宮に寄進された荘園の一部となり、鵠沼郷と呼ばれるようになりました。
• - 江戸時代: 旗本布施家と大橋家の領地、幕府領に分かれ、湘南海岸に幕府の炮術調練場が置かれました。
• - 江戸末期: 農漁村であり、農業は畑作、漁業は地引き網が中心でした。

近代

• - 明治時代: 東海道本線の開通とともに、海水浴場や別荘地として開発が始まりました。1902年には江ノ電が開通し、別荘地としての発展が加速しました。
• - 大正時代: 多くの文人墨客が鵠沼に滞在し、作品に鵠沼の風景を描きました。特に旅館東屋は文化人の社交場となりました。
• - 神奈川県による湘南海岸開発: 1930年代には、県による湘南海岸の国際観光地化計画が進められましたが、日中戦争により頓挫しました。
• - 第二次世界大戦中: 疎開先として人口が激増しました。

現代

• - 高度経済成長期: 宅地開発が進み、ベッドタウン化が進みました。旧別荘地では、松が失われ、道路の拡幅が遅れたため、災害の危険度が増しました。
• - 現在: 首都圏に近い観光地として、多くの観光客が訪れています。サーフィンやビーチバレーの発祥地としても知られ、多くのサーフショップが営業しています。

地域の特徴

• - 風光明媚な環境: 江の島が近く、砂浜とクロマツの林が広がる平坦な地形です。
• - 住環境: 別荘地開発により住環境が早くから整っており、現在も高い水準を維持しています。
• - 地域住民の意識: 地域への愛着が強く、住環境の保全・美化活動に熱心です。
• - 道路事情: 幹線道路以外は狭く複雑に入り組んでいますが、それが治安の良さにつながっているとも言えます。
• - 交通の便: 鉄道やバス路線が充実しており、通勤・通学の利便性は高いです。

地名

• - 伝統的な旧集落名: 神明宮、石上神社、新田宮、八坂神社の氏子集落があります。
• - 1873年制定の小字: 現在もバス停や公園名に残るものがあります。
• - 別荘地・住宅開発により生まれた地名: 大曲、松島苑、宮崎町、小川町、百両山などがあります。
• - 戦後行われた住居表示改訂によって制定された現行地名: 鵠沼松が岡、鵠沼海岸、鵠沼桜が岡、鵠沼藤が谷、鵠沼神明、本鵠沼、鵠沼石上、鵠沼橘、鵠沼花沢町、鵠沼東などがあります。

地名の由来

• - 鵠（くぐい）とは白鳥の古名で、かつて湿地が多く、白鳥が飛来したことに由来するといわれています。

文化財

• - 大橋重政の墓、皇大神宮人形山車、旧近藤邸、旧後藤医院藤沢分院などが指定・登録文化財となっています。

ゆかりのある著名人

• - 上皇后美智子、秩父宮雍仁親王、安倍能成など、皇族や政治家、文化人が多く居住しました。文学、美術、芸能、スポーツ、経済など、各界で活躍した著名人が多く、鵠沼の歴史と文化を彩っています。

鵠沼を舞台にした作品

• - 芥川龍之介、阿部昭、志賀直哉など、多くの作家が鵠沼を舞台にした小説やエッセイを書いています。映画やコミックにも登場し、鵠沼の魅力が描かれています。

施設

• - 駅：小田急江ノ島線、JR東海道本線、江ノ島電鉄
• - バス：江ノ電バス藤沢
• - 行政施設：国、神奈川県、藤沢市の施設が多数あります
• - 教育施設：公立・私立の小中学校、高等学校、幼稚園があります
• - 公園：県立湘南海岸公園、市立八部公園などがあります。
• - 医療施設：クローバーホスピタルなど
• - 宗教施設：神社、仏教寺院、キリスト教会などがあります。

まとめ

鵠沼は、豊かな自然、歴史、文化が調和した魅力的な地域です。湘南海岸でのレジャーや、文人ゆかりの地を巡るなど、様々な楽しみ方ができます。この記事を通じて、鵠沼の魅力を少しでも知っていただければ幸いです。

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