国神社

国神社

岡山県岡山市北区三門中町に鎮座する国神社（くにじんじゃ）は、古くからこの地に祀られる由緒ある神社です。特に、平安時代中期に編纂された格式高い『延喜式神名帳』にその名が記載されている、いわゆる式内社に数えられます。近代社格制度においては村社とされていました。

祭神

国神社で主にお祀りされている神様は、大国主命（おおくにぬしのみこと）と事代主命（ことしろぬしのみこと）の二柱です。大国主命は日本の国土を開拓し、国造りを行ったとされる神であり、縁結びや医療、農業など幅広い御神徳で知られます。一方、事代主命は大国主命の子とされ、託宣の神や、商売繁盛・漁業の守り神として厚く信仰されています。

ただし、伝承には異説も見られます。古来の記録の中には、主祭神として大国主命を据え、その相殿（あいどの）に武勇の神として知られる素戔嗚命（すさのおのみこと）を、さらに合殿（ごうでん）に八幡宮の神々を祀っていたとする記述も存在しており、祭神の構成については複数の伝承があったようです。

歴史

国神社の起源については、貞観2年（860年）に創建されたという伝承が残されており、鎮座当初には従四位下という高い神階を授かっていたとも伝えられています。この由緒は、平安時代中期に成立した『延喜式神名帳』の備前国御野郡（みのぐん）の項目に「国神社」として記されていることからも裏付けられ、古代から朝廷にも認識されていた重要な神社であったことが窺えます。

戦乱を経て、慶長年間（1596年-1615年）には社殿の再建が行われたと記録されており、当時の社領は2石6斗2升であったことが伝わっています。その後も神社の維持・修造は続けられ、寛文年間（1661年-1673年）に造営が、宝暦元年（1751年）にも再建が行われたことが記録に残されています。また、明和3年（1766年）には、地域にあった国守八幡宮（くにのかみはちまんぐう）を合祀した歴史もあります。

江戸時代に記された『備陽記』や『備陽国誌』といった備前国の地誌にも国神社の名は見られますが、これらの史料を紐解くと、江戸時代の中頃には一度、祭祀が途絶え、神社が廃れてしまった時期があったことが推測されています。しかし、明治時代初頭になり、神仏分離令などの社会変動の中で、近くに鎮座する伊福八幡宮（いふくはちまんぐう）の相殿として国神社の祭祀が復活しました。その後、神社の再編や式内社の調査が進む中で、伊福八幡宮の相殿という形から独立した神社としての再興が図られ、祭神の構成も当初とは主従が逆転するなどの変遷を経て、式内社「国神社」として現在の形に至ったと見られています。近代に入ってからは、地域の重要な神社として村社に位置づけられました。

祭事

国神社では年間を通していくつかの祭事が執り行われています。

戎祭（1月10日）：正月に近い時期に行われる商売繁盛などを願う賑やかなお祭りです。
夏祭（8月1日）：夏の盛りに無病息災や五穀豊穣を祈願するお祭りです。
* 秋祭（10月5日・6日）：実りの秋を感謝し、豊かな収穫を祈願する、年間で最も重要とされるお祭りです。

これらの祭事を通じて、地域の人々の信仰を集め、古からの伝統が今に伝えられています。国神社は、古代からの歴史を持つ式内社として、また一度廃れながらも再興を遂げた神社として、地域の歴史や信仰を伝える貴重な存在です。

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