神階

神階（しんかい） ― 神々への位階制度

神階とは、日本神道において神々に授けられた位階を指します。これは、人臣に与えられた位階制度を神々にも適用したものであり、文位、武位、品位の三種類が存在しました。それぞれの位階は、神々に様々な栄誉や特典を与えるとともに、神々の序列や重要性を示すものでした。

1. 文位（ぶんい）

文位は、学識や功績によって授けられる位階です。人臣の場合、少初位下から正一位までの30階がありましたが、神道においては正六位から正一位までの15階が設けられました。『日本書紀』には、天武[[天皇]]元年（673年）に、壬申の乱で霊験を示した神々に位階が授けられた最初の記録が残されています。その後、嘉祥4年（851年）には全国の神社の祭神に正六位以上の神階が贈られるようになり、次第に濫授される傾向が見られました。

正一位が最高の位階であり、次いで従一位、正二位、従二位といった具合に、位階が下っていきます。「正」は「しょう」、「従」は「じゅ」と読み、「三位」は「さんみ」、「四位」は「しい」と読みます。

2. 武位（ぶい）・勲位（くんい）・勲等（くんとう）

武位は、武功によって授けられる位階です。人臣に対しては、武勲を挙げた者に与えられましたが、7世紀半ばからはそれ以外の者にも与えられるようになりました。神道においても同様で、天平神護元年（765年）には、恵美押勝の乱で霊験を示した神に勲八等が授けられた記録が残っています。しかし、11世紀以降は、神への勲位の授与は行われなくなりました。勲位は勲十二等から勲一等まで12等級がありました。

3. 品位（ほんい）

品位は、主に皇族に授けられる位階です。神道においては、授けられた例は少ないですが、天平勝宝元年（749年）には、宇佐八幡大神に一品、その比売神に二品が授けられた記録があります。

4. 神階と社格、そしてその変遷

神階は、神社ごとに定められる社格とは異なるものです。人臣の位階が官職や位田（土地）などの特典を伴うのと同様に、初期の神階には食封や位田が伴っていました。しかし、その後は給与が廃止され、栄誉的な意味合いが強まりました。結果として、神階よりも神社の社格の方が重視されるようになりました。

分祀（神を分割して別の神社に祀ること）の際には、神階は通常引き継がれませんでした。神階を引き継ぐには勅許が必要でしたが、律令制の崩壊後には、分祀先でも勧請元の神社の神階を名乗る神社も現れました。特に稲荷神社は、総本社である伏見稲荷大社が正一位であるため、そこから勧請を受けた多くの稲荷神社が正一位を称しています。

神階の授与は、当初は神祇官や諸国からの申請に基づいて公卿の会議で議論され、天皇の奏聞を経て決定されていました。しかし、平安時代以降は、神祇官や国司が勝手に神階を授与することが頻繁に行われるようになりました。中世以降は、吉田家も「宗源宣旨」と呼ばれる宣旨で神階を発行するようになりました。宗源宣旨は当初は天皇の勅許の下に発行されていましたが、後に吉田家が独自に発行するようになりました。

江戸時代には、神階授与に関する最終決定は勅許によるものに限定され、吉田家による宗源宣旨の発行は停止されました。この決定は江戸幕府の同意を得ていたと考えられています。江戸時代を通じて確認されている神階授与はわずか65件です。

明治時代には神階制度は廃止されましたが、現在でも社名に神階をつけている神社が存在します。

5. 諸神同時昇叙

平安時代中期以降には、多くの神々を同時に昇叙する例が見られました。嘉祥4年（851年）には、従五位下以上の神々は一階昇叙され、大社の名神は無位でも従五位下を授けられました。こうした諸神同時昇叙は、その後も何度か行われました。

6. 一代一度大神宝使の制

貞観元年（859年）に始まり、仁和2年（888年）に制度化された「一代一度大神宝使の制」は、天皇の即位大典ごとに、伊勢神宮や全国の諸名神に神宝・御幣を奉献するものでした。鎌倉時代中期まで継続したこの制度は、朝廷と神社の強い結びつきを示しています。

神階制度は、日本の神道において重要な役割を果たした制度でした。その歴史と変遷を理解することで、日本の宗教文化の一端を垣間見ることができます。

もう一度検索