国立博物館 (ニューデリー)

インド国立博物館：インドの歴史と文化の宝庫

ニューデリーの中心部に位置するインド国立博物館は、インドの歴史と文化を深く理解するための貴重な拠点です。大統領官邸とインド門を結ぶ主要道路沿いに建つその建物は、インド独立後まもなく設立され、現在では3階建ての壮大な施設として、20万点を超える膨大なコレクションを誇ります。

多彩な展示：紀元前からの歴史をたどる旅

博物館の展示は、紀元前3000年頃のインダス文明から現代に至るまで、インドの歴史と文化を網羅しています。

インダス文明：インダス川流域に栄えた先史文明の貴重な遺物が展示されています。精巧な印章、独特な陶器、粘土製の小さな人形、青銅器など、当時の生活を垣間見ることができる数々の品々を通して、高度な文明が築かれていたことを物語っています。中には、装飾品を身につけたまま埋葬された人骨と副葬品も展示されており、当時の埋葬文化を知る上で貴重な資料となっています。

仏教関連：マウリヤ朝、シュンガ朝、クシャーナ朝といった歴史的な王朝時代の仏教美術をたどることができます。初期の仏教美術では、仏陀像の直接的な表現が避けられていましたが、展示されているマウリヤ朝のレリーフは、その時代の信仰観を象徴的に表しています。一方、ギリシア文明の影響を受けたガンダーラ仏は、ギリシア風の容貌を持つ仏像として、仏教美術における文化交流の軌跡を示しています。さらに、仏陀の生誕地カピラヴァストゥから出土した仏舎利も展示され、多くの仏教徒の信仰を集めています。

ヒンドゥー教関連：インドの宗教文化を語る上で欠かせないヒンドゥー教関連の展示は、その充実ぶりで来館者を圧倒します。グプタ朝時代の素焼きの像から、チョーラ朝の青銅製の神像、そして各地で作られた石造の神像や寺院の装飾まで、力強く、躍動感あふれる作品の数々は、ヒンドゥー教の神々の世界観を鮮やかに表現しています。

コイン：インド国内で鋳造された様々な金貨、銀貨、銅貨の実物や、鋳造作業を再現した模型などが展示されています。インドの各王朝が発行したコインだけでなく、イギリス植民地時代のイギリス通貨も展示されており、インドの貨幣史を紐解くことができます。

その他：ヒンドゥー教の神話を描いた絵画や、歴代王朝の歴史を描いたミニアチュール、インド各地の工芸品、少数民族の風俗・衣装など、多様な展示が来館者を魅了します。ムガル帝国時代の武器や甲冑なども展示されており、日本のものと比較することで興味深い発見があるかもしれません。また、インド海軍に関する展示室も設けられています。

館内施設と入館について

博物館内には、インド各地の美術品や工芸品、書籍などを扱う売店や、軽食レストランも併設されています。研究施設も存在しますが、一般客の立ち入りは制限されています。

外国人向けの入場料金は、インド国民よりも高めに設定されていますが、英語、フランス語、ドイツ語、日本語に対応したヘッドフォンガイドが無料で提供されています。カメラの持ち込みは有料で許可されていますが、ビデオ撮影は禁止されています。全ての展示物の解説は、ヒンディー語と英語で表記されています。

インド国立博物館は、単なる博物館という枠を超え、インドの歴史と文化を深く理解し、その魅力に触れることができる、まさにインドの魂を体感できる場所です。

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