国立競技場のデザインコンペ (2012年)

新国立競技場デザインコンペの詳細

2012年、新国立競技場の建て替えに伴い、国際デザインコンペが開催されました。正式名称を「新国立競技場基本構想国際デザイン競技」とするこのコンペは、2020年夏季オリンピックの東京開催決定を見据え、日本スポーツ振興センター（JSC）と国立競技場将来構想有識者会議によって進められました。

コンペの概要

2012年7月13日、JSCと有識者会議はコンペの実施を決定。募集要項には、2019年ラグビーW杯の会場使用に間に合うこと、8万人規模の収容能力、開閉式屋根の設置、延床面積約29万平方メートル、総工費約1,300億円という詳細な条件が盛り込まれました。募集期間は約2ヶ月間と短く、国内外から計46件の応募がありました。技術調査や審査を経て、最終的に11件の作品が選ばれ、2012年 11月15日に審査結果が発表されました。

最優秀賞には、イギリスの建築家ザハ・ハディドの作品が選ばれましたが、建設費の高騰により2015年に白紙撤回。その後、再コンペが行われることになりました。

公募内容

JSCは2012年 7月20日に公募を開始し、スポーツWGと文化WGの要望を基に建築WG（座長：安藤忠雄）が詳細を取りまとめました。当初、サブトラックの設置を検討していたものの、最終的には明治神宮外苑の軟式グラウンドをサブトラック、第二球場を投擲練習場とする構想に変更されました。審査委員は計11名で、建築、スポーツ、文化の各分野から選出され、技術調査員も加わりました。応募資格は、国際的な建築賞の受賞経験や、収容人数1.5万人以上のスタジアム設計実績などが求められました。

審査と結果

2012年9月25日の締切までに、国内12点、海外34点の計46作品が集まりました。一次審査では11作品が選出され、最終審査では「未来を示すデザイン」「実現性」「技術的チャレンジ」など、４つの項目を基準に評価されました。

その結果、ザハ・ハディド案が最優秀賞、オーストラリアのコックス・アーキテクチャーが優秀賞、日本のSANAAと日建設計が入選となりました。ザハ・ハディドには賞金2000万円が贈られ、基本設計、実施設計、施工段階での監修を担うことになりましたが、実施設計者は選出されませんでした。

コンペの応募期間が短かったことに対し、一部からはIOCへの計画書提出期限に間に合わせるためのものではないかとの指摘もありました。また、審査員の一人である内藤廣は、世論喚起を急ぐあまり、誤解を招くような情報発信があったことへの反省の意を示しました。さらに、ザハ案が公募条件の建設範囲を逸脱していたものの、事後修正が可能とJSCにみなされたことも報道されました。

ザハ・ハディド案

ザハ・ハディド案は、特徴的なサドル型スタンドを採用しており、8万人規模の収容能力を実現するために、座席間隔を480mm（一部460mm）に設定。設計は、ザハ事務所（ZHA）がデザイン監修として参加し、日建設計、梓設計、日本設計、アラップの4社が設計JVを構成。施工は大成建設と竹中工務店が担当しました。

屋根を支えるためのキールアーチは、大規模であり、不安定さが指摘されました。構造的には、アーチの広がりを抑えるためにクロスタイやサイドストラットが用いられ、地中構造物の「アーチタイ」で固定する設計でした。

ザハ案と旧国立競技場の比較

ザハ案の延べ敷地は、募集要項では約29万平方メートルとされていました。旧国立競技場は地下階がありませんでしたが、地下通路はありました。座席数は、最大でフットボールモード、陸上モードで異なり、車いす席の数によって変動しました。総工費は、旧国立競技場が現在の貨幣価値で約190億円であるのに対し、ザハ案は大幅に高騰しました。

まとめ

新国立競技場のデザインコンペは、多くの議論と紆余曲折を経て、最終的にザハ・ハディド案が選出されましたが、建設コストの問題から白紙撤回となり、再コンペが行われることになりました。この過程は、大規模な公共事業におけるデザインコンペの難しさ、そしてその透明性、公正性に対する課題を浮き彫りにしました。

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