国鉄ケ100形蒸気機関車

ケ100形蒸気機関車：建設工事を支えた特殊狭軌線用機関車

ケ100形は、かつて日本国有鉄道（国鉄）およびその前身である鉄道院、鉄道省に在籍した特殊狭軌線用のタンク式蒸気機関車です。鉄道院が建設工事用に製造した初の機関車であり、雨宮製作所製の6両と福岡県の深川造船所製の2両が存在しました。本形式は、製造の経緯や外観が大きく異なっていましたが、ここでは便宜的に雨宮製作所製を「第1種」、深川造船所製を「第2種」と呼称し、解説していきます。

第1種（雨宮製作所製）

1919年（大正8年）、鉄道院は初めて雨宮製作所に機関車を発注しました。これがケ100形（第1種）であり、車軸配置0-4-0(B)、飽和式で2気筒単式のウェルタンク機関車です。6両（ケ100 - ケ105）が製造され、運転整備重量は5.55t、全長は5m足らずでした。

当時、軽便鉄道用の機関車としてドイツのコッペル社製が普及していましたが、第一次世界大戦の影響で輸入が困難となっていました。また、鉄道院自体も機関車を輸入しない方針を打ち出していたため、雨宮製作所のような中小メーカーに注目が集まりました。

設計は鉄道院側が概略の仕様を示し、雨宮製作所側が実施し、承認を得る形で行われました。外観上の特徴は、蒸気ドームの頂上部に設けられた加減弁と、ヘンシェルやハノーバー製の古い小型機関車に見られる独特の様式のワルシャート式弁装置です。研究の結果、同じ雨宮製作所製のケ90形と準同形であることが判明しています。

1919年12月から1920年（大正9年）3月にかけて落成し、東京・秋田・多度津の各建設事務所に配置されました。その後、熊本・岡山・米子の各建設事務所を経て、晩年は岐阜・盛岡建設事務所に配置されました。特筆すべきは、全機がいずれかの時期に一度は信濃川電気事務所に配置されたことです。

廃車は1953年（昭和28年）度ですが、それ以前から廃車同然の状態となっていたものも少なくありません。例えば、盛岡建設事務所で使用されていたケ102, ケ104は1949年（昭和24年）に廃棄されましたが、記録への反映は1953年度にずれ込んでいます。また、ケ101は1950年に西武鉄道に払い下げられましたが、書類上の処理は1953年でした。

同系機

本形式は、研究者間では旧系列のB型4 - 5トン機と呼ばれ、1912年（明治45年）から1920年にかけて製造されたグループに属し、その中で最も新しい形式です。

第2種（深川造船所製）

1922年（大正11年）には深川造船所で2両が製造されました。第1種が建設局の発注であったのに対し、こちらは工務局の発注でした。製造番号は不明ですが、車蒸番号は49, 50に相当します。基本寸法はほぼ共通ですが、動輪直径をはじめ、形態は大きく異なっていました。

外観上の大きな違いは、蒸気ドーム側面に設けられた加減弁です。また、ボイラーの大きさやシリンダの寸法は、同じ深川製の車軸配置0-6-0(C)形のケ150形と共通でした。このため、第1種と同じ形式に編入されたのは、やや強引な措置だったと言えるかもしれません。

この機関車について特筆すべきは、番号の錯誤です。公報達によれば、両機はケ106, ケ107とされていますが、現車に付された番号はケ105, ケ106でした。つまり、ケ105が第1種と重複し、二車現存状態になっていたことになります。

調査の結果、施設局では雨宮製のケ105は車蒸1号、深川製のケ105は車蒸49号（ケ106は車蒸50号）と整理されていました。一方、工作局ではケ100をポーター製、ケ101 - ケ105を雨宮製、ケ106, ケ107を深川製としていました。施設局の台帳の方が実態に則していたと言えるでしょう。

第2種の2両は、1922年12月に落成し、東京改良事務所に配置されました。その後、山口、岡山、広島の各建設事務所をめぐり、最後は新橋工事事務所（横須賀線延長工事）に配属されました。廃車は両機とも1954年（昭和29年）度ですが、実際はかなり以前から休車状態だったようです。その後、両機は浜松工場で解体されました。

ケ100形は、その短い生涯の中で、日本の鉄道建設に大きく貢献した機関車でした。

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