国鉄シキ300形貨車

国鉄シキ300形貨車

国鉄シキ300形貨車は、1958年3月15日に日立製作所で一両のみが製造された特異なデザインの大物車両です。この貨車は、低床式で175トン、あるいは吊り掛け式で210トンの積載が可能で、日本の貨車の中でも特に重量を誇っています。シキ300は、当初日本国有鉄道（国鉄）に属しており、1997年の国鉄分割民営化に際して、日本貨物鉄道（JR貨物）に引き継がれました。

この貨車は、4つの台車から構成されており、車端には四軸ボギー台車、車両中央には六軸ボギー台車が備えられています。そのため、合計で20軸の設計となっており、高い安定性と荷重処理能力を確保しています。特に、六軸ボギー台車は日本唯一の特異なもので、横圧を軽減させるために、第2軸と第5軸以外の車軸が横移動可能となっている点が特徴的です。また、第1軸と第6軸の輪軸には特別な踏面形状が採用され、脱線係数を低く抑える工夫が施されています。また、近代的な設計が反映されており、軸距の短縮にも重点が置かれています。

シキ300は、空気ブレーキシステムとしてKD203形を装備しており、積載時と空車時で手動でブレーキの切り替えが行なえます。低床式の梁はシキ300Aと呼ばれ、175トンの荷重は日本の低床式大物車の中で最大のものとされています。全長は37,700 mm、自重101トンも日本の貨車の中で記録的な大きさです。

一方、吊り掛け式の梁はシキ300Bと名付けられており、空車時の全長は27,300 mmに設定されています。荷受梁は強度を考慮したトラス構造で、溶接組み立て方式が採用されています。これにより、大きな荷重に耐えうる強固な構造を実現しました。

使用に際しては、シキ300は日立製作所が所有する私有貨車でした。常備駅は当初日立駅で、1965年からは常陸多賀駅が常備所となり、1984年、1988年には再び日立駅と常陸多賀駅の間を行き来するようになりました。この貨車は1992年11月にA梁・B梁ともに廃車となり、その歴史を閉じました。

参考文献

• - 鉄道公報
• - 吉岡心平『大物車のすべて 中』ネコ・パブリッシング〈RM LIBRARY 92〉、2007年4月1日。
• - 吉岡心平『大物車のすべて 下』ネコ・パブリッシング〈RM LIBRARY 93〉、2007年5月1日。
• - 貨車技術発達史編纂委員会 編『日本の貨車 -技術発達史-』日本鉄道車輌工業会、2009年4月30日。

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