国鉄シキ370形貨車

国鉄シキ370形貨車

国鉄シキ370形貨車は、1961年の9月13日に日本車輌製造の支店で1両だけ製造された特大型の貨物車です。この貨車は、日本国有鉄道およびその後のJR貨物において、170トンという積載能力を持つ吊り掛け式の大物貨車として位置づけられていました。

このシキ370形は、特に変圧器などの大きな貨物を安全に運ぶために設計されています。荷物を吊る方法として採用されているのはシュナーベル式、すなわち吊り掛け式です。シキ370形は、同様の設計のシキ280形と多くの共通点を持ちつつも、性能の最適化が図られています。

この貨車には、ベッテンドルフ式という2軸のボギー台車が2つ装着されており、合計で8つの台車を持つ16軸構造となっています。そのため、貨物を載せていない状態で全長は26,030 mmに達します。荷受梁はトラス構造を採用し、強度と耐久性が確保されています。

ブレーキシステムは空気ブレーキを利用し、手動での積空変更が可能な仕組みを取り入れています。具体的には、A弁とUC形シリンダーの2台を組み合わせたユニークな構造です。シキ280形では、初回の貨物運送時に脱線事故が発生したために後に改修が施されていますが、シキ370形は初めからその対策が考慮されて設計されているため、同様の問題を避けることができました。

また、シキ370形は、シキ280形と同じ走行装置を用いながらも、最大荷重を5トン増やすことに成功しています。その理由は、荷受梁交換を考慮せずに設計が行われ、枕枠の設計が最適化されたためです。荷物を載せていないときの運転速度は65 km/h、貨物を搭載しているときは35 km/hとなっています。

この貨車は、明電舎に所有されていた私有貨車であり、常備駅は沼津駅でした。2003年にはJR貨物に引き継がれましたが、同年の2月に廃車となり、沼津駅に常備されていたシキ290と共に解体されてしまいました。このように、国鉄シキ370形貨車は、特大貨物輸送のために特別に設計された貴重な輸送手段であり、その役割を果たしてきました。

参考文献

• - 鉄道公報
• - 吉岡心平著『大物車のすべて 下』(初版) ネコ・パブリッシング〈RM LIBRARY 93〉、2007年5月1日。ISBN 978-4-7770-5200-4
• - 吉岡心平著『プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑』(復刻増補) ネコ・パブリッシング、2008年。ISBN 978-4-7770-0583-3

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