国鉄シキ60形貨車

国鉄シキ60形貨車について

国鉄シキ60形貨車は、1923年から1944年にかけて日本で製造された50トン積みの低床式大物車で、全8両が作られました。特徴的なこの車両は、低床式だけでなく、必要に応じて梁を交換することで平床式や落し込み式としても利用することができました。

形式の変遷

当初は明治44年の称号規程に基づき、オシウ40形として番号が付けられましたが、1928年に称号規程の改正があり、シキ60形のシキ60 - シキ62に改名されました。その後、シキ63からシキ67まで計5両が追加で製造され、これらの全てが異なる時期に活躍しました。具体的には、大正時代に製造されたシキ60 - シキ62の3両は鉄道省浜松工場で造られ、戦時中の貨物輸送の需要が急増したことから、1944年に田中車輛で追加新造されました。

設計と構造

この貨車は当時の日本では初めて複式ボギー台車を採用し、TR16形として分類される菱枠台車を4台装備しています。車両の全長は18,540 mm、車体長は17,600 mmで、大きな運搬能力を誇っていました。低床部のレール面上高は764 mmで、特に大物貨物を扱うのに適していました。しかし、空気ブレーキは装備されず、側ブレーキのみに頼る構造でした。

枕枠の長さは5,600 mmで、これを単独で貨車として使用することも可能でした。さらに、回転枕木を装備し、車体の中央に連結器を装備できるデザインは、多様な使い方に柔軟に対応できるものでした。これにより、長い貨物を2台の枕枠間で渡しかけて輸送することも可能でした。

落し込み式梁と軍用の用途

1936年には、信濃川発電所の建設に際して使用されることとなった落し込み式の梁も開発されました。これは特に大規模な変圧器輸送用に作られ、一般の貨物輸送にも活用されることとなりました。また、陸軍省が所有する専用の荷受梁も用意され、この荷受梁を利用して要塞砲を輸送することが可能でした。中でも低床式の荷受梁には心皿が仮設され、輸送の効率を高める設計がされていました。

使用と廃止

1966年度から1972年度にかけて、シキ60形貨車は順次廃車となりましたが、在籍中のこの貨車は多岐にわたる用途で活躍を続け、特に戦時中の特大貨物輸送において重要な役割を果たしました。特に、第二次大戦末期には一部の車両が列車砲への改造を受けた記録も残っていますが、実戦には使用されずに終戦を迎え、元の貨車仕様へと復旧されています。

特殊な役割と連合軍への提供

また、1946年には連合軍専用の貨車として3両が指定され、特殊な改造を受けました。これらの車両は戦車輸送に使用され、特に朝鮮戦争期には一時経路を変更する必要があったものの、重要な役目を担っていました。最終的に、1952年にサンフランシスコ平和条約が発効した後も、1両は米軍専用車として使用され続けました。

まとめ

このように、国鉄シキ60形貨車はその設計、用途の広さに加え、歴史の中でさまざまな重要な役割を担ったことから、今でも鉄道貨物運送史に名を刻んでいます。我々は、このような歴史的な貨車の存在を知り、理解を深めることで、その技術の進歩と歴史的意義を感じ取ることができます。

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