国鉄シム2000形貨車

国鉄シム2000形貨車：自動車輸送の先駆け

国鉄シム2000形貨車は、1963年（昭和38年）に日本車輌製造で30両製造された、ダイハツ工業所有の私有貨車です。製造当初は「シム」という大物車に分類されていましたが、1965年（昭和40年）の称号規定改正で車運車に分類変更され、「クム2000形」と改称されました。

開発の背景

この貨車が製造された背景には、自動車輸送を鉄道に移行する試みがありました。前年に試作されたシム1000形での反省点を踏まえ、より効率的な輸送を目指して開発されました。当時、ダイハツ工業の池田工場では年間約1万台の自動車が生産されていましたが、鉄道輸送されていたのはわずか500台程度でした。この状況を改善するために、シム2000形は開発されました。

設計のポイント

開発はシム1000形と同様に日本車輌製造が担当し、ダイハツ、国鉄、日本通運が協力しました。主な輸送対象はハイゼットとコンパーノです。車体は全長9,650mm、全幅2,470mm、全高1,690mmで、自重8.0t、荷重15tの二軸車でした。ベースにはワラ1形有蓋車の台枠が利用され、二段リンク式サスペンションが採用されています。特筆すべきは、貨物運賃計算上の荷重が実際の荷重（約3.5t）とは異なり15tと定められていたことです。後に12tに修正されましたが、実際の荷重とは一致しませんでした。これはシム1000形やシム3000形にも共通する特徴です。

荷役方法については、シム1000形のクレーン利用の煩雑さを解消するため、大幅な改善が図られました。台枠上にはターンテーブル、固定式テーブル、折りたたみテーブルが搭載され、自動車が自走して乗車できる構造になっています。積み込み作業は15分で完了し、テーブルは緩衝ゴムで台枠と接続され、走行時の衝撃が自動車に伝わりにくい工夫がなされました。ハイゼットは横向きに6台、コンパーノは縦向きに4台、または混載も可能でした。ターンテーブルはコンパーノ輸送時にのみ使用され、輸送時は緊締金具で自動車を固定しました。

運用の歴史

シム2000形は福知山線川西池田駅を常備駅として、主に北陸・東北方面へ月5～6回運行されました。試作に終わったクム1000形とは異なり、一定の成功を収めたと評価されています。1966年9月には北伊丹駅に専用線と積み込み施設が完成し常備駅が変更されましたが、10月からは汎用貨車ク5000形による輸送が開始され、シム2000形は補助的な役割となりました。自動車のモデルチェンジに対応するため、緊締金具の改造が3回行われましたが、その費用が問題となり、1970年6月に一旦使用中止となりました。

1972年には、ダイハツ工業前橋工場と西宮工場間での生産調整のため、フェローマックスとハイゼットバンの交換輸送が必要となり、ク5000形では対応できなかったため、本形式を改造して対応することになりました。クム2004に対し試験的な改造が実施され、台枠上のテーブルを撤去し、鋼材によるタイヤガイドで5台の自動車を横向きに積載できるように変更されました。しかし、福知山線の複線化計画により北伊丹駅の専用線契約が解除されたため、1975年に改造計画は中止され、1977年には形式消滅となりました。

まとめ

国鉄シム2000形貨車は、自動車輸送の効率化を目指した画期的な貨車でした。様々な工夫が凝らされた設計は、当時の鉄道輸送の技術革新を示すものであり、その運用と試行錯誤の歴史は、鉄道貨物輸送の変遷を物語る貴重な事例と言えるでしょう。

参考文献

• - 渡辺 一策『RM LIBRARY 83 車を運ぶ貨車（上）』（初版）ネコパブリッシング、2006年。ISBN 4-7770-5172-2
• - 渡辺 一策『RM LIBRARY 84 車を運ぶ貨車（下）』（初版）ネコパブリッシング、2006年。ISBN 4-7770-5173-0

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