国鉄タキ1900形貨車

国鉄タキ1900形貨車について

国鉄タキ1900形貨車は、日本の鉄道貨物運送において重要な役割を果たしていたセメント専用の貨車です。日本国有鉄道（国鉄）によって1964年から1981年に製造され、1987年の分割民営化以降は日本貨物鉄道（JR貨物）に引き継がれました。この形の貨車は、40トンのセメントを本格的に運搬するために設計され、タンク車の中でも特に数が多く製造されたことで知られています。

概要と製造の背景

タキ1900形は、1964年から1981年にかけて、複数の大手メーカーにより合計1,729両が製造されました。この数は日本の私有貨車としては最大規模であり、その重要性を物語っています。車両の番号は特殊標記符号「コ」から始まり、上記の規模に応じた様々な系列に分けられています。

車両の構造

この貨車の設計は、35トン積みのタキ7300形を基にしており、セメントを40トンまで運ぶことができるように改良されています。タンク体は普通鋼製のドームレス異径胴で、内側にはセメントの付着を防ぐため耐アルカリ塗料が施されています。タンクの容積は32.0から36.4立方メートルあり、荷役方式はエアスライド式を採用しています。エアスライド方式では、タンク内のセメントが空気の力で押し出され、スムーズな荷下ろしが可能です。

台車と塗装

タキ1900形は、ベッテンドルフ式のボギー台車を装備しています。初期のモデルはTR41系の台車を使用していましたが、後期モデルにはTR209系やTR213Cなど、より進化したタイプが使用されていました。基本的には黒い塗装が施されていますが、特定のターミナル所有の貨車には薄緑色の塗装がされ利用されました。

形態の区分

タキ1900形は、製造した会社に応じて異なるタイプがあります。川崎重工業製、日立製作所製、日本車輌製造製、そして三菱重工業製などがあり、それぞれ台車や構造に若干の違いが見られます。全体として見ると、これらの車両は1973年に設立されるセメントの共同ターミナルの設計基準に沿って製造されており、各構造もそのニーズに応じて最適化されています。

所有者と運行状況

タキ1900形貨車の所有者は、主要なセメントメーカーをはじめとする企業が見受けられますが、国鉄末期には淘汰が始まりました。1987年の分割民営化時には1,466両がJR貨物に引き継がれ、その後も徐々に数が減少しました。2021年時点では、タキ1900形によるセメント列車が数少なくなり、三岐鉄道での運行が残るのみとなっています。

現在の状況

現在、稼働しているタキ1900形は95両と考えられており、これらは主に延命工事が施され常用されています。タキ1900形は物流における重要なセメント輸送の一翼を担っており、使用状況は以前の繁忙期と比較すれば限定的ですが、その役割は今も絶えず続いています。日本におけるセメント輸送は減少の一途を辿っていますが、タキ1900形の存在はその調達および輸送システムを支える基盤となっています。

もう一度検索