国鉄タキ21700形貨車

国鉄タキ21700形・タキ23500形貨車：オルソジクロルベンゼン専用の稀少タンク車

日本国有鉄道（国鉄）時代から、分割民営化を経て日本貨物鉄道（JR貨物）発足後まで活躍した私有貨車の中に、特定の化成品輸送に特化した形式がいくつか存在します。本稿で解説するタキ21700形とタキ23500形は、化学物質であるオルソジクロルベンゼンを輸送するために設計された、数少ない専用タンク貨車です。これら両形式は、製造両数が非常に少なく、国鉄末期からJR貨物初期にかけての比較的短い期間にのみ運用されました。

タキ21700形

タキ21700形は、オルソジクロルベンゼン輸送用途として、35トン積載可能なタンク貨車として計画されました。しかし、実際に製造されたのは、1971年（昭和46年）9月1日に富士重工業で落成したわずか1両（コタキ21700）のみです。この車両には、全長が12メートル以下であることを示す特殊標記符号「コ」が冠され、「コタキ」と標記されました。

この形式以外でオルソジクロルベンゼンを専用品目とした貨車は、後述のタキ23500形（2両製造）があるのみで、この化学物質輸送用の貨車がいかに少なかったかが分かります。

タキ21700形の所有者は保土谷化学工業で、福島県の郡山駅が常備駅として指定されていました。輸送されるオルソジクロルベンゼンの危険性を示すため、1979年（昭和54年）10月からは化成品分類番号「燃毒63」が標記されました。これは、この物質が燃焼性があり、かつ毒性を持つ可燃性の毒性物質であることを示しています。

車両の仕様としては、タンク体には耐候性の高い高張力鋼が使用されました。荷役方式は、タンク上部に設けられたマンホールから荷を積み込み、吐出管を使って下方から抜き出す下出し方式を採用しています。車体色は一般的な黒色でした。

主な寸法は、全長が11,100mm、全幅は2,504mm、全高が3,630mmです。台車中心間の距離は7,000mm、タンクの実容積は26.7m3、自重は14.4トンでした。貨車の重量換算両数は、積車時が5.0、空車時が1.4となります。台車には、当時の国鉄貨車に広く用いられていたベッテンドルフ式のTR41Cが装備されました。

1987年（昭和62年）4月の国鉄分割民営化を迎えた際、この1両のタキ21700形はJR貨物へと引き継がれました。しかし、2000年（平成12年）10月には運用を終えて廃車となり、同時に形式自体も消滅しました。

タキ23500形

タキ23500形は、タキ21700形の後継にあたるオルソジクロルベンゼン専用タンク車で、積載容量が37トンに増強されました。タキ21700形が1両のみだったのに対し、タキ23500形は2両が製造されました。

製造は1980年（昭和55年）に行われ、タキ23500は10月8日に日本車輌製造で、タキ23501は12月23日に富士重工業でそれぞれ落成しました。こちらも、オルソジクロルベンゼン輸送用として、タキ21700形と同様に化成品分類番号「燃毒63」が標記されています。

所有者は2社に分かれており、タキ23500は日本陸運産業、タキ23501は保土谷化学工業が所有しました。それぞれの常備駅は、日本陸運産業所有車が総武本線越中島支線の越中島駅、保土谷化学工業所有車がタキ21700形と同じ福島県の郡山駅でした。

タンク体の材質はタキ21700形と同様に耐候性高張力鋼製です。荷役方式は、上部のマンホールからの積み込みは同じですが、抜き出し方法が異なります。タキ23500形は、液出管と空気管を用いてタンク上部から荷を抜き出す上出し方式を採用しました。液出管にはS字管が装備されています。

車体色は黒色で、主な寸法は、全長が12,200mm、全幅が2,591mm、全高が3,674mmです。タキ21700形と比較して、全長や全幅、全高がやや大きくなっています。台車中心間距離は同じく7,000mm、実容積は28.3m3、自重は16.3トンです。換算両数は、積車時が5.5、空車時が1.6でした。台車には、タキ21700形とは異なるベッテンドルフ式のTR213Cが使用されています。

1987年（昭和62年）4月の国鉄分割民営化時には、製造された2両全てがJR貨物へと継承されました。しかし、タキ21700形と同じく2000年（平成12年）10月には最後の1両（タキ23501）が廃車となり、これによりタキ23500形も形式消滅となりました。

両形式ともに製造両数が少なく、オルソジクロルベンゼンという特殊な貨物輸送に特化していたため、鉄道貨物輸送の歴史の中では比較的目立たない存在でしたが、特定の産業輸送を支えた車両としてその足跡を残しました。

（参考文献：吉岡心平『プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑（復刻増補）』、貨車技術発達史編纂委員会編著『日本の貨車-技術発達史-』）

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