国鉄ト21600形貨車

国鉄ト21600形貨車の詳細

概要

国鉄ト21600形貨車は、1914年から1917年の間に製造された日本国有鉄道（国鉄）の二軸無蓋貨車です。この貨車は、特に15トンの荷重を搭載できる無蓋車として注目されており、製造数は2096両にのぼります。その後、1928年に称号規程の改正により「トム1形」と改称されました。

この貨車の特徴は、荷台の寸法です。長さ6930mm、幅2200mmで、側板の高さが1000mmという高い設計がなされており、そのために荷重をしっかり支えられました。固定された上部の板と一部が倒れるあおり戸の独自の設計があり、これにより操作性が向上しました。また、観音開きの扉が中央に設置され、いわゆる「観音トム」とも称されています。このデザインは、当時他の貨車には見られなかったもので、実用性を考慮した工夫が施されています。

製造と設計の背景

ト21600形は、1914年から1917年にかけて、日本車輌製造や天野工場、汽車製造支店などで製造されました。この無蓋貨車は、他の貨車に比べて全長が約7760mm〜7947mm、自重が6.5tから8.0tで、コンパクトながら効率的な設計が施されています。特に、側板が高く設計されていることが、15トンの石炭を載せるための重要なポイントとなっています。

また、ト21600形は、総重量が約22トンに達し、当時の建設規定の上限に近かったため、特例としてその適用から外されている点も興味深いです。

改番とその後の状況

1928年には、称号規程改正に伴いトム1形に変更されました。実際には、当時のト21600形は特定の廃車や改造により2050両以上が残されていましたが、最終的には1971年度まで存続しました。特に事業用車の支援として長期間利用されたため、その活躍は古くからの鉄道貨物輸送の歴史の中で重要な位置を占めていました。

形式間改造

この貨車は、改造や付随車製作の観点からも多様な形を持つことが特徴です。例えば、1918年から1920年にかけて改造されたト23700形（トサ1形）は、24トン積みの三軸無蓋車としての役割を果たしました。また、トフ20900形と呼ばれる13トン積みの無蓋緩急車も製造され、これらは後にトム5000形に編入されることになります。

譲渡と実用例

国鉄ト21600形貨車はその後、多くの私鉄に譲渡され、その結果、さまざまな形態の貨車が誕生しました。たとえば、西武鉄道へは200両以上が譲渡され、トム501形として運用されました。また、津軽鉄道や北九州鉄道など、多様な鉄道現場でその特徴が生かされ、国有化の流れの中で形式が編入されることがありました。

これらの背景を考慮すると、国鉄ト21600形貨車は日本の鉄道史における重要な遺産であり、その設計思想や運用状況は、当時の技術力を反映したものと言えるでしょう。数多くの改造や譲渡を経て、それぞれの鉄道会社で新たな役割を果たし続けた点でも、実に興味深い存在です。

もう一度検索