国鉄ワキ700形貨車

国鉄ワキ700形貨車の概要

国鉄ワキ700形貨車は、かつて日本国有鉄道（国鉄）およびその前身である鉄道省に在籍した特別な有蓋貨車です。1943年、太平洋戦争の真っ只中に30両が製造され、主に海軍向けに使用されました。この貨車は、30トンの積載能力を持つ二軸ボギータイプで、製造は主に大宮工機部と大井工機部によって行われました。

使用目的と仕様

このワキ700形貨車は、日本海軍が所有した私有貨車であり、輸送の主な目的は海軍工廠から基地へ航空魚雷や爆弾を運ぶことでした。特に、九一式航空魚雷は長さ5.5メートル、重さ1トンに及ぶため、通常の有蓋車では不十分であったことから、専用の貨車の開発が進められました。さらに、常に機密保持が求められたため、所有者名の表示は省略されています。

ワキ700形貨車の特徴は、側引戸にあり、その外吊り式両引き戸は幅3.5メートルで、車体の側面左側にオフセットされて設置されており、流通させる大量の特殊貨物に適した設計となっています。また、車内には荷役用のホイストも装備されていました。1944年には特攻兵器「回天」の輸送用に6両が改造されたとされていますが、その詳細は不明な点が多いです。

戦後の変遷

戦局が変わった1945年には、4両が戦中に廃車となり、残った26両が大蔵省に移管されます。戦後の日本では、軍の所有物であったワキ700形は当初の目的を失ったものの、その大きな収容能力により、荷物車や急行便用などに転用されました。特に代用客車としても使われることが多く、内部に電灯を設置したり貫通扉を設けた車両も存在しました。

中には、連合国軍に接収され、連合軍専用の客車として利用されたワキ704とワキ709のような事例もありました。これらは、各種用途に合わせた改装が行われ、連合軍の需要に応える形で運用されていました。

連合国軍専用客車の詳細

1946年、ワキ709は改造されて連合軍用の衛生車として使用されるようになり、軍号「NILES」と命名されました。研究設備を設けたこの車両は、伝染病の予防や視察活動に利用されました。また、ワキ704は酒保車（P.X. Car）として改造され、米軍のキャンプを巡回して物品を販売する役割を担いました。

このような変遷を経て、ワキ700形は1953年に連合国軍の接収が解除され、再び国鉄に戻されましたが、最終的な所有権は1958年に国鉄に移され、汎用の大型有蓋車として再度運用されることになりました。しかし、1977年にこの形式は正式に消滅しました。

まとめ

非常に特異な役割を果たした国鉄ワキ700形貨車は、戦時中の特殊な事情から登場し、その後も新たな用途に応じて様々に利用された歴史を持つ車両です。特に、航空魚雷や特攻兵器の輸送に特化した設計など、時代のニーズを反映した貴重な存在でした。

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