国鉄105形蒸気機関車

国鉄105形蒸気機関車：波乱に満ちた生涯を辿る

国鉄105形蒸気機関車は、その生涯において数々の鉄道会社を渡り歩いた、特異な経歴を持つタンク式蒸気機関車です。元々は秋田鉄道の4.1形として活躍していましたが、国有化に伴い国鉄籍となり、その後も複数の鉄道会社を経て、最終的には解体されました。

生い立ちと遍歴

この機関車のルーツは、1913年にイギリスのカー・ステュアート社で製造された2両のタンク機関車に遡ります。製造番号1197と1198の2両は、中央鉄道向けに製造されましたが、中央鉄道の路線建設の遅れから、1197号機は引き取られたものの、1198号機はキャンセルとなってしまいました。中央鉄道は、1197号機を上武鉄道（現秩父鉄道）へ貸し出すものの、後に返却。その後、信濃鉄道を経て播州鉄道へと渡り、側水槽の増強改造も受けましたが、晩年はあまり使用されず、出石鉄道に譲渡後、廃車解体されました。

一方、キャンセルされた1198号機は、1914年に秋田鉄道が開業用として購入され、4.1形として使用されました。秋田鉄道は、国有化に伴い国鉄105形となりましたが、間もなく休車となり、1938年には流山鉄道（現流鉄）に譲渡されました。流山鉄道では、シリンダー横へのステップ設置や、蒸気ドームと砂箱の大型化といった改造が行われました。特に砂箱は、国鉄2500形からの発生品が使用されました。その後、1951年には日本車輌製造蕨工場の入換用となり、1960年にその生涯を終えました。

特徴的なデザインと改造

国鉄105形は、英国製の独特なデザインが特徴です。ずんぐりとしたシルエットは、当時の他の機関車とは一線を画しています。流山鉄道時代には、実用性を向上させるための改造が施され、その姿は大きく変化しました。特に、蒸気ドームと砂箱の大型化は、外観上の大きな特徴となっています。

主要諸元

• - 全長: 7,799mm
• - 全高: 3,428mm
• - 全幅: 2,394mm
• - 軌間: 1,067mm
• - 車軸配置: 2-4-0(1B)
• - 動輪直径: 1,370mm
• - 弁装置: スチーブンソン式基本型
• - シリンダー（直径×行程）: 330mm×508mm
• - ボイラー圧力: 11.0kg/cm2
• - 火格子面積: 0.70m2
• - 全伝熱面積: 41.0m2
• - 煙管蒸発伝熱面積: 36.9m2
• - 火室蒸発伝熱面積: 4.1m2
• - 小煙管（直径×長さ×数）: 45mm×2,743mm×107本
• - 機関車運転整備重量: 26.42t
• - 機関車空車重量: 20.32t
• - 機関車動輪上重量（運転整備時）: 19.81t
• - 機関車動輪軸重（第1動輪上）: 10.06t
• - 水タンク容量: 3.4m3
• - 燃料積載量: 1.02t

機関車性能

• - シリンダ引張力（0.85P）: 3,040kg
• - ブレーキ方式: 手ブレーキ、蒸気ブレーキ

まとめ

国鉄105形蒸気機関車は、その波乱に満ちた歴史の中で、数多くの鉄道会社の路線を走り抜けました。イギリスで生まれ、日本の地方鉄道を渡り歩いたこの機関車は、そのユニークな経歴と改造によって、鉄道ファンにとって興味深い存在となっています。技術的な仕様からも、当時の鉄道技術を垣間見ることができ、鉄道史における貴重な一台と言えるでしょう。

参考文献

• - 臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」 1956年 鉄道図書刊行会
• - 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成 1」 1968年 誠文堂新光社
• - 臼井茂信「機関車の系譜図 2」 1973年 交友社
• - 金田茂裕「形式別 国鉄の蒸気機関車 I」 1984年 プレス・アイゼンバーン

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