国鉄32系電車

32系電車の概要

32系電車（32けいでんしゃ）は、1930年から1932年にかけて日本国有鉄道（国鉄）の前身である鉄道省が横須賀線向けに導入した旧型電車であり、特に2扉クロスシートの設計で知られています。この車両系列は、モハ32形（001 - 045）、サロ45形（001 - 013）、サロハ46形（001 - 013）、クハ47形（001 - 010）、サハ48形（001 - 028）、クロ49形（001, 002）の6形式で構成され、総数111両が製造されました。特に、サロハ46形とサハ48形は後に京阪神地区向けにも製造が行われています。

導入の背景

横須賀線は、海軍の基地が存在する横須賀や、陸軍の観音崎砲台への輸送を目的として建設された重要な軍事路線です。路線は早期に複線化され、1924年には横須賀までの複線化が完了し、電化のための工事が1922年から始まっていました。湘南電気鉄道の開業もあり、電車導入の必要性が高まり、1930年には既存の蒸気機関車から電車への切り替えが計画されました。このような背景の中で、32系電車が導入され、1930年3月15日から運行が開始されました。

32系電車の車体設計

32系電車は、当時の他の国鉄電車とは一線を画した設計を持っています。長距離運行を考慮して車体は広く、内部はボックスシートとロングシートが巧みに配置されています。客用扉は両端に寄せられ、乗降の混雑を減らすために工夫されました。また、側面窓は二段上昇式で、客室の明るさにも配慮されています。

この車両系列では、20 m級の付随車や制御車が初めて採用され、従来の省電とは異なる新しいアプローチが試みられました。たとえば、モハ32形は17 m級の電動車体が基にされ、主電動機にはMT15系のものが搭載されています。

運用の実績

1931年4月1日から運転を開始し、1932年7月には排除予定であった従来の電車を置き換え、東京と横須賀の間で44往復の列車が運行されるようになりました。横須賀線の運行は1930年代を通じて多くの改良が加えられており、特に1935年には便所の取付けが実施され、車両の快適さが向上しました。

戦中と戦後の変遷

戦時中、横須賀線の電車は多くの人々に利用され、重要な交通手段となりましたが、戦後は連合国軍によって一部車両が接収されたり、改造される事例が見受けられました。サロ45形やサハ48形の一部が改造され、通勤車として使われるようになるなど、柔軟性を発揮しました。

さらに長い運用の中で

32系電車は1960年代半ばに113系電車に取って代わられるまで運用され、多くの形式が静岡鉄道管理局や飯田線、身延線などに転用されました。このように、32系電車はただの車両以上のものであり、その歴史的な重要性は今なお評価されています。

結論

32系電車は、単なる輸送手段ではなく、その背後には国の動向や時代の流れが色濃く反映されています。その不滅の足跡は、今後も鉄道史における重要な部分として語り継がれていくことでしょう。

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