国鉄3920形蒸気機関車

3920形蒸気機関車について

3920形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道作業局に属し、特に急な勾配を克服する目的で設計されたアプト式の蒸気機関車です。この機関車は、急勾配への対応が求められた信越線の横川から軽井沢間の碓氷峠に投入されました。もともと導入のきっかけとなったのは、ドイツのエスリンゲン社が製造したAD形（3900形）であり、これを改良した形が3920形です。1895年に製造されたこの機関車は、官設鉄道からの要請を受けたイギリスのベイヤー・ピーコック社によって輸入されました。

設計背景と特長

当時の日本の官設鉄道には多くのイギリス人技術者が在籍していましたが、なぜドイツ製に頼る必要があったのか、その背景には国の意地や技術の進化に対する痛感がありました。3920形は、エスリンゲンのAD形の欠陥を改善する形で設計されました。ポイントは、ピニオン駆動用のシリンダーのサイズを小さくしつつも、ボイラーの容量を増やすことで、出力の向上を目指した点です。

この機関車は2-6-0（1C）という車軸配置を持ち、先輪が追加されました。動輪のためのシリンダーに加えて、ピニオン駆動用のシリンダーも搭載されている4シリンダー設計です。これによって、運転の際における機動性が向上しました。加えて、煙突がT字形という特殊な形状を有していて、トンネル内での排煙を確保するための工夫が施されました。

煙害対策とその限界

3920形は、使用区間に多数のトンネルが存在するため、煙や煤による運転の困難を緩和するための様々な工夫が施されました。特にT字形の煙突は、排煙の効果を高めようとした実験でしたが、期待したほどの効果が得られず、最終的には従来の煙突に戻されることとなりました。また、当初は重油を使用する試験も行われましたが、これも十分には成果を上げませんでした。

役割と廃車

1909年には国有化され、3920形という形式に改称されました。この時期には煤煙対策も重油への切り替えが進められましたが、1912年には最終的に碓氷峠が電化されることになり、3920形の役目は終わりを迎えました。この機関車は、その後も生き残ったものの、1917年に廃車されてしまったのです。しかしながら、最後の3921号は解体されずに田町に放置され、1923年の関東大震災によって被災したという記録が残っています。

主要諸元

3920形の主要な性能は次の通りです。

• - 全長：9,169 mm
• - 全高：3,835 mm
• - 最大幅：2,656 mm
• - 軌間：1,067 mm
• - 車軸配置：2-6-0（1C）
• - 動輪直径：914 mm
• - ボイラー圧力：12.4 kg/cm²
• - 機関車重量（運転整備時）：56.13 t

このように、3920形は当時の技術とニーズを反映した特別な設計を受けた蒸気機関車でした。その製造背景や技術的な特長は、鉄道の歴史を知るうえで重要な要素となっています。

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