国鉄7000形蒸気機関車

7000形蒸気機関車：アメリカ生まれの小さな力持ち

7000形は、かつて鉄道院（後の日本国有鉄道）に在籍した、小柄なテンダー式蒸気機関車です。そのルーツは北海道にあり、釧路鉄道という地方私鉄の機関車として活躍していました。

誕生と経緯

7000形は、1887年にアメリカのボールドウィン・ロコモティブ・ワークスで製造されました。この機関車は、ボールドウィン社が初めて日本に輸出した蒸気機関車の一つで、メーカー形式は"6-D-11"。車軸配置は0-6-0(C)で、2気筒単式の飽和式機関車でした。わずか2両（製造番号8591, 8592）が製造され、運転整備重量が10トン、全長が10メートル足らずという、軽便鉄道並みの小型機でした。しかし、大型のダイヤモンドスタック付き煙突や、機関車前部のカウキャッチャーなど、当時のアメリカ古典機スタイルを色濃く残していました。

興味深いことに、この機関車と同系統の設計を基に、軌間762mmのタンク式機関車が陸軍鉄道連隊によって大量に輸入され、日露戦争中に満州や朝鮮半島で使用されています。

愛称と変遷

7000形には、釧路鉄道のオーナーであった安田善次郎にちなんだ「進善」「長安」という愛称が付けられていました。釧路鉄道の廃止後、この機関車は北海道庁鉄道部（北海道官設鉄道）に売却され、C1形（4, 5）となりました。1905年には鉄道作業局に編入され、Ea形と改称。そして、1909年の鉄道院車両形式称号規程制定により、7000形（7000, 7001）という形式名が与えられました。

鉄道院時代には、旭川や岩見沢で入換作業や工事用に使用されましたが、1919年と1921年に廃車となり、その生涯を終えました。

主要諸元

全長: 9,779mm
全高: 2,870mm
最大幅: 2,050mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 0-6-0(C)
動輪直径: 838mm
シリンダー（直径×行程）: 229mm×343mm
ボイラー圧力: 7.0kg/cm2
機関車運転整備重量: 10.07t
炭水車運転整備重量: 7.98t

現在

現在、7000形の実機は残っていませんが、硫黄山のレストハウスには、その姿を偲ぶことができる蒸気機関車の模型が展示されています。

参考文献

臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 1」1972年、交友社刊
金田茂裕「日本蒸気機関車史 官設鉄道編」1972年、交友社刊
金田茂裕「形式別 国鉄の蒸気機関車 III」1985年、機関車史研究会刊
川上幸義「私の蒸気機関車史　上」1978年、交友社刊
高田隆雄監修「万有ガイドシリーズ12　蒸気機関車 日本編」1981年、小学館刊
* 「日本に輸入されたBALDWIN製蒸気機関車の製造番号表」1969年「SL No.2」、交友社刊

7000形は、その短い生涯の中で、北海道の開拓から鉄道の国有化、そしてその後の発展を見守ってきました。アメリカ生まれの小さな機関車は、日本の鉄道史に確かにその名を刻んでいます。

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