国鉄72系電車

国鉄72系電車

国鉄72系電車（こくてつ72けいでんしゃ）は、日本国有鉄道によって製造された通勤形電車の系列の一つであり、特に1952年から1958年にかけて新製されたことで知られています。このエントリでは72系の詳細な歴史、設計、特徴、運用について説明します。

概要

72系電車は、同種の設計思想を持つ電車を便宜的に称した名称であり、正式な系統名ではありません。書籍によっては73系や63系とともに言及されることもあり、広く「72系」と呼称されます。具体的には、63系電車の改良型として新製されたものを指し、基本設計の改善が施されています。本記事では、72系新製車のみに焦点を当てます。

72系新製車の登場背景

1945年8月に第二次世界大戦が終わり、急速な復興が始まりました。これに伴い、国鉄は輸送力増強を求められ、大都市の通勤輸送に対応するために63系電車を大量生産しました。しかし、63系の戦時設計に起因する欠陥が原因で1951年には桜木町事故と呼ばれる大惨事が発生しました。この事故は、構造的な問題を抱えた63系電車が多大な犠牲を出す結果となり、その後、国鉄は63系の改良を決断します。

国鉄は、63系電車の設計思想を踏襲しながらも、1949年の新設計思想を取り入れて72系を世に送り出しました。この72系は、設計面での数々の改善が施されました。まずはモハ72形という中間電動車と、制御車のクハ79形が新たに製造され、従来の73形や78形は新製されませんでした。タクシーなどでの連結運転に最適な形状に改良され、より高い運送効率を実現しています。

製造と構造

72系新製車は半鋼製で、その基本的な設計はモハ63形に基づいています。車体は20m級切妻型であり、片引扉を4箇所備え、窓の構造も3段となっています。さらに、貫通扉には引戸が採用され、安全性の向上が見られます。車両の出入り口にはHゴム支持の戸袋窓が装備されており、性能および安全性が高められています。

また、72系新製車は、基本設計に加えて新型のDT17台車を導入し、より良い走行性能を提供します。電動機は旧型のMT40の改良版を使用し、ブレーキシステムも自動空気ブレーキを採用しています。

設計の改良

製造期間中に数々の設計変更が行われ、特にクハ79形の前面形状においては国鉄通勤形電車デザインの基本形態が確立される過程が見られます。例えば、前面窓配置が多様化し、通風機構の改善が実施されました。また、1957年からのほぼ全てのバリエーションにおいて、先頭部や窓の設計に改良が施されています。

運用とその後の歴史

72系は、1950年代から1970年代初頭まで、山手線や中央線を中心に広く活躍しました。特に都市部での高い輸送力が求められる路線において、その利便性を存分に発揮しました。しかし、高度経済成長期に突入すると、新性能の車両との性能差が顕著となり、72系は次第に運用から外れていきます。最後に残ったのは1980年代でしたが、可部線や仙石線などのローカル路線での短期間の運用で姿を消しました。

搬送力を重視した設計と、特に戦後における通勤ラッシュに対応したその成功は、今も多くの鉄道ファンに記憶されています。72系電車の構造と歴史は、当時の国鉄における技術革新と、通勤形電車としての進化を物語っています。

保存と現在の状況

廃車後、一部の72系電車は保存されていますが、ほとんどの車両は解体されています。特に修復作業が行われているクモハ73383の存在は、その存在価値を再確認させるものであり、今後の展望に期待が寄せられます。

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